「ローマに捧げる挽歌」グラディエーター つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
ローマに捧げる挽歌
多分、ローマ皇帝の二人は第16代ローマ皇帝、マルクス・アウレリウス・アントニヌス帝と彼の息子である、ルキウス・アウレリウス・コンモドゥス帝がモデル。
偉大な父から放蕩の暴君へと委譲された帝国の歴史を大胆に脚色しながら、より深みのある人間ドラマと壮大なスケール、今観ても説得力のあるこだわりのプロダクトデザインで描き出す、歴史大作だ。
実はこれが2回目の鑑賞で、初めて観た時は気がつかなかったのだが、主人公・マキシマスと対立関係となるコモドゥス帝の人物描写がとても丁寧だ。
伝記的な記述よりもダメな子に描かれてる部分はあるが、「何故彼はこんな行動に出たのか」という部分をきっちり作り込んでいる。
そのお陰でラストまでの筋書きが収束していく流れに、淀みがない。
マキシマスを応援する一方で、コモドゥスへ憐れみを感じてしまう。
自分が求める「生きる意味」とは何なのか?
その問いを突き詰めたとき、相見えるマキシマスとコモドゥスは、その意味を永遠に失った哀しい二人の男だ。マキシマスの絶望の裏で、コモドゥスもまた絶望している。
帰る家を失ったマキシマス。家に居場所のないコモドゥス。二人はこんなにも似ているのに、どうしてマキシマスは愛され、コモドゥスは愛されないのか?
この悲しみしかない世界にに終止符を打つことが「自由」なのか。
悲壮で物悲しい物語の中で、ラストショットのコロシアム越しの夕陽だけが「生命力あふれる自由」を感じさせてくれる。
全編を通して、神話を観ているような気持ちにさせられる圧巻の映像美。その重厚な迫力は今も色褪せない名作だ。
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