劇場公開日 1960年3月15日

「セバスチャンを巡って」去年の夏突然に JYARIさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5セバスチャンを巡って

2022年12月13日
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姪が叔母によりロボトミー手術を受けさせられそうになる話。
そこに不在のセバスチャンが絡んでくると、急に面白くなるのです。

あの母親のセバスチャンを語るときの言い回しが凄くて、
「誰もがセバスチャンと私のことを親子ではなく、セバスチャンとヴァイオレットと呼んだ」みたいなこと言うのよね。こんなにも一文で彼女の性格と彼女らの関係性を言い表せるものかね。

さらには、姪のキャサリン。
彼女も凄いこと言い出すのよ。
セバスチャンが彼女を出しにして、男を捕まえていたって……なんていう話だよ!
それを黙らせるために叔母にロボトミー手術を受けさせられるなんてさ。
この辺りの会話がピークで面白かったですな。
そんでおかしくなったキャサリンは自殺未遂までする。

テネシー・ウィリアムズの女性キャラは、
毎度悲惨な目にあう。
今回も露骨にテネシー味溢るる作品だった。
同性愛者の従兄弟を持った女が、酷い目に遭う。
持った女側から描くのがお決まりの手法だ。
(というよりも、当時は持った側からの作品しか描けなかった、と言う方が正しいかもしれない。)
「熱いトタン屋根の上の猫」
「欲望という名の電車」しかり。

ラストの真実が明かされる場面。
キャサリンは卑猥な水着を着せられ、
客寄せに使われる、本当になんて話だよ
そこからの流れで、物乞いの楽器隊が登場するのだが、
あそこが割に不自然に感じた。
何か隠したがっているような……。
(と思ったら、男娼を置き換えているよう。
なるほど、そのままは描けない訳だ。
だから、映画が終わってもなお、セバスチャンの謎はベールに包まれ続ける。)

エリザベス・テイラー、存在感がすごい、
それだけでなく演技もすごい。
もう佇まいから何からすきだわ。
(何故か「紳士は金髪がお好き」のジェーン・ラッセルや、「八月の鯨」のリリアン・ギッシュと混ざるのよな…。彼女はクレオパトラの人。。)
キャサリンヘプバーンも安定した自然な演技を見せつけていた。

監督は「イブの総て」のジョセフ・マンキウィッツ。

JYARI