劇場公開日 2024年3月8日

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「語り手の過去の過去のそのまた過去が積み重なっているホテル」季節のはざまで talismanさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5語り手の過去の過去のそのまた過去が積み重なっているホテル

2024年4月8日
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鑑賞方法:映画館

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スイスの豪奢なホテル。語り手の祖母(演じるのはフェリーニの妹!)が経営するそのホテルはヨーロッパ、いや世界中からリッチな客がスイスの山々、涼しさ、美味しさ、セレブの雰囲気を求めてやってくる。仕事口求めてもいろんな人が来る。

この映画の語り手であるヴァランタン、取り壊しになると聞いて懐かしいホテルに向かう。広くてゴージャスで大きなホテル。でも今、目の前にあるホテルの廊下もバーもロビーも埃っぽく家具もない。捨てることができず何でもとっておく祖母のトランクの中にある物を屋根裏部屋に見つけて思い出が蘇る。

ヴァランタンがまだ6~7歳の頃。祖父母とそのホテルに住みハイシーズンは屋根裏部屋、オフシーズンにはいい部屋に住むから季節の変わり目ごとに祖父母と共にトランク沢山持ってホテル内の素敵な階段を上り下りする場面が何度も繰り返される。それほど男の子、ヴァランタンにとってウキウキする時期だったんだろう。

祖母にねだるお話はいつも同じだけれど少しずつ変化がある。私達も子どものヴァランタンと一緒にわくわくとおばあちゃんの話を聞く。

サラ・ベルナールが話に登場するのはおじいちゃんがとっても若くてロンドンのホテル・サボイのレストランのウェイターをしていたときのこと。20世紀のほんの前半だろう。その後おじいちゃんはおばあちゃんに出会い結婚した。おばあちゃんはテキパキ女性。ダニエル・シュミットの映画の特徴、強い女に男がついて行く。だからママと息子(子どもというより大きくて小太り)の組み合わせもよく登場する。

20~30年代に青春あるいは人生の成熟期を過ごした人達にとって、その頃のドイツはベルリンで花を咲かせたキャバレー、歌、映画が忘れられない。だから戦後、ヴァランタンが子どもの頃も、ホテルの晩に望まれる歌は新しいアメリカの歌でなくて古い歌。客の年齢層が高いから。そうするとどうしてもドイツはベルリンとなる。マレーネ・ディートリヒを彷彿とさせるようなドイツ語の歌。第二次大戦で嫌な思いをした人もいるから「またドイツか!」と嫌な顔をするおじいちゃんお客さんもいる。でも歌い手(演じるのはイングリット・カーフェン;フライヤー見ながら書いてるから大変!全然知らないから。知ってるのはシュミット監督の映画「ラ・パロマ」に魅了されたという私の過去だけだ)は魅力的で子どものヴァランタンに優しい。彼女のドイツ語の歌は本当に素敵。サントラ欲しい。

家具もテーブルも照明も、どの客も素敵な衣装、アクセサリー、ヘアスタイル、メイク、帽子、おしゃべりとオーラ。そんな彼らが羽目を外す。ブレヒトの「三文オペラ」の扮装をして。

ダニエル・シュミット監督の自伝でもあるようなこの映画がファンから特に愛されていることがよくわかった。海がないスイスに「海が見える部屋」を用意しておくホテル。なんて素敵なんだろう。この映画ならいつでも夢を見ることができる。

talisman
トミーさんのコメント
2024年4月26日

共感&コメントありがとうございます。
「アルフレード、アルフレード!!」察していただきありがとうございました。

トミー
トミーさんのコメント
2024年4月26日

最後のシーンはそういう感じなんですね、全部見せずに水平線? だけ見せる所が腕ですね。

トミー
Mr.C.B.2さんのコメント
2024年4月9日

私は、この作品を観ていないのですが、是非観たいと思います。
琥珀糖さん、sow_miyaさん、NOBUさん、talismanさん皆さん揃って推しているので。
という、コメントを「ファイティング・ファミリー」に入れたのですが反映されません。2021年の投稿だからですかね。ここのコメントも消えていますが、消しました?

Mr.C.B.2