劇場公開日 1963年10月26日

「「She knows!」」奇跡の人(1962) komasaさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0 「She knows!」

2025年6月5日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

観ているだけで体力をごっそり持っていかれた。これだけストレートな表現やぶつかり合いから疎遠になっているからかもしれない。

勿論、ぶつかり合うと言っても敬意を失ったり理性を感情が押しつぶす様なことはない。この辺りはとてもアメリカ的な良さだと思う。皆それぞれにヘレンの事を思っている。その思い方の違いが見所だと思うのだが、そこに込められた膨大なエネルギーが見る側にのしかかってくる。その為、見る側には相応の体力が必要となるのだろう。でも、愛というものは本来のその位の質量を伴ったものなのかもしれない。

それにしても、ヘレン役のパティ・デュークの怖いくらいの凄味は圧巻。それを受けて立つサリバン先生役のアン・バンクロフトも凄い。

komasa
Gustavさんのコメント
2025年6月10日

komasaさん、コメントと共感ありがとうございます。
私も約50年振りに見直して感動を新たにしています。幅広い年代に訴える教育的な題材故に、特に若い人に観てもらいたい名作の筆頭に挙げられますね。同情と愛情の違い、言葉が人間にとって如何に大切かを諭し、舞台では表現できないサリヴァン先生の過酷な過去や苦悩もフラッシュバックを使い丁寧に表現されていて、アン・バンクロフトの演技の深みになっています。初見の時は感動の涙で忘れていましたが、ヘレンの義兄とサリヴァン先生の弟が同じジェームズという名前で、それが離れの家での本音の会話につながります。足の不自由な弟を救えなかったサリヴァン先生が、ジェームズから力を得る意図が含まれている様に見えました。このジェームズが次第にサリヴァン先生の味方になっていく変化もいいですね。
ラストのヘレンが鐘を鳴らす演出が素晴らしいです。理由なき従順ではない、ヘレンの自発的行為、それは言葉に意味があることに気付いた覚醒の自己主張であり、また舞台と映画ならではの表現法です。ヘレンが母親から鍵を貰いサリヴァン先生に渡すシーンには、それまでの癇癪を侘び、感謝を伝えるヘレンの賢さが奇麗に描かれています。そこから教師が母の愛情には勝てない挫折感にいたサリヴァン先生の気持ちを変え、心からヘレンを愛せるようになるラストシーン。見事ですね。
日本初公開の1963年のベストワンは「アラビアのロレンス」に譲りましたが、感動的な映画として記憶に深く刻まれた名作でした。

Gustav
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