「やっぱりパロディ」奇跡の海 小二郎さんの映画レビュー(感想・評価)
やっぱりパロディ
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トリアー作品を暗い、重いって言う人は多いけど、私は、ある種のパロディと思う。
この映画も、キリスト教のパロディだ。
夫を愛し妄信する女主人公は、イエスを信仰する信者のカリカチュアである。
夫(イエス)の言う通りにすれば、救われる。そう信じて、夫の指示に従い、いろんな男と寝まくる女主人公。
「すべての人を愛せよ」というイエスの言葉を、そのまんま実践・実写化したら、実はこういうことになっちゃうじゃないの?というトリアーの嫌味である。
女主人公の住む村には、敬虔なキリスト信者たちが居て、ニンフォマニアそのものの女の行動に眉をしかめる訳だが、そんな信者たちよりも、実は女の方が真摯に愚直に神を信じている。女の行為は実に宗教的である。その行動は愚かで過酷であるが、信仰の真の姿とは、かように過酷なものなのだ。あなた達、既存の信者に、そんな覚悟はありますか?という、問いかけの映画なのだと思う。
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この映画が、何か非常に心に残る魅力を持っているのは、トリアーの考え方の面白さというよりも、エミリー・ワトソンの神がかった演技にあると、個人的には思う。
どうしようもなく愚かな女の行動を、愛の物語、信仰の恍惚へと、昇華させている。
「信仰」って変でしょ?のつもりで作った映画が、「愛」そして「信じること」の崇高さが際立つ映画になっている。
これ、「宗教って変だよね?」を問いかけるために、イエスの行動を敢えて写実的に撮ったパゾリーニの『奇跡の丘』が、数ある宗教映画の中でも実に感動的に仕上がってしまったのと、どこか似てるなあと思う。
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