「タイトルからは想像つかないきれいなおばさんと少年の純愛話」カンフーマスター! 志塚直人さんの映画レビュー(感想・評価)
タイトルからは想像つかないきれいなおばさんと少年の純愛話
ジェーン・バーキンがちょっとばかりおばさんになった頃に、アニエス・ヴァルダによって撮られた素敵な映画。ヴァルダはこの映画の制作に合わせて、バーキンの半生を描いたドキュメンタリー、「アニエス・vによるジェーン・b」も監督している。この映画には「カンフー・マスター」のメイキング映像や制作秘話もあり、ヴァルダいわく双子の映画とのこと。あわせて鑑賞されることをお勧めしたい。
バーキンは映画デビュー以来の未成熟なエロティックなイメージを残しつつ、二児の母となった大人の女性らしさも合わせ持った感じで描かれている。
ストーリーは、バーキン演じるマリー=ジェーンが、中学生の娘の同級生の少年に恋をするというというもの。スキャンダラスなテーマながら、それほどエロティックな感じのない純愛話。
タイトルのカンフー・マスターとは、少年が夢中になっているビデオゲームの名前から(名称は違うがファミコン世代には懐かしいスパルタンX)。このゲームの設定も巧みにストーリーに織り混ぜられている。
また、ちょうどAIDS(フランス語ではSIDA)の脅威が叫ばれた頃で、作中にも取り上げられたシーンがあり、その時代の雰囲気を感じさせてくれる。
娘役には、バーキンの本当の娘、シャルロット・ゲンズブールと、ルー・ドワイヨンが。また劇中、バーキンが故郷英国に帰省するシーンがあるのだが、そこでも実の両親や兄がそのままの役で登場する。また彼女と恋に落ちる少年役は監督ヴァルダの息子マチュ・ドゥミが演じているということで、家族的なリラックスした雰囲気の中で撮影されたようである。ただそれほど演技に素人くささは感じられないので、芸達者な家系なんだろうか。
今のバーキンの印象はこの頃とあまり変わっていない気がする。永遠にちょっとHな雰囲気のある、きれいなおばさんのままである。