「アメリカ映画のジャンルに「クリント・ イーストウッド」があってもいい」ガントレット asukari-yさんの映画レビュー(感想・評価)
アメリカ映画のジャンルに「クリント・ イーストウッド」があってもいい
自分の目線から観て、正直本作は大した作品ではない。点数がそれを大まかに物語っている。ざっくりして雑に感じるストーリー。見どころがないわけではないが、そんな盛り上がるというより、「なんでや!?」と首をかしげてしまう演出と展開。凡庸な感じが否めず、いつもなら個人的に凡作と捉えてしまう内容なんですが・・・本作を、自分は凡作と捉えません。理由はただ一つ・・・
クリント・イーストウッドが作った映画という視点です。
ストーリーとしては、フェニックス州の刑事でアウトローな男が、長官の命によりラスベガスから裁判に必要な証人である女性を護送する仕事に就く。しかしそこから証人ともども誰かに命を狙われるハメになる・・・という感じです。
刑事モノの作品ではありますが、正直これは“西部劇”です。無法者な感じの堅物男が見ず知らずの女性のために漢を張る。今回は女性ですが、だれかを助けるためには相手を殴り、銃を突き付けても守り抜くステレオタイプな男。まさに西部劇の典型的なストーリー展開に思えるのです。しかも監督・主演はその西部劇で名を馳せた名優・・・
クリント・イーストウッドです。
つまり、これはイーストウッドが西部劇を模して作った現代劇であると思うんです。そして、その厳つさ、胆力、漢気に面白さを感じてしまうんです。そう、本作は「イーストウッドの厳つさと男らしさを楽しむ作品」と言えるのではないでしょうか。そうなると本作の見方がガラリと変わります。凡庸な作品が、アウトローに生きる男の渋さと厳つさにカッコよさを感じる作品に変わるんです。
かといって、これが他の俳優にできるでしょうか?たとえ話で申し訳ありませんが、芸人の浜田雅功のツッコミ、言動は“彼特有のキャラ”と思える節があるでしょうか?よくよく考えれば「そんなどぎついことよーできるなぁ」と思えることをやっていると思いますが、それは彼が今まで積み上げてきたモノが成せる領域であると思います。このイメージが、イーストウッドにも当てはまるのです。イーストウッドが積み上げてきた“アウトローの漢”、だからこそこのストーリー・演出で作品が成立していると思うんです。それが本作の核ではないでしょうか?
正直序盤を観てるだけで「なんやこの作品・・・」と思ってしまう本作。しかし、イーストウッド好きであるなら本作はお勧めです。本作はイーストウッドらしさを存分に感じる作品であると思います。
また、これだけイーストウッドらしさで成立してしまうクリント・イーストウッドの凄さに敬意を表し、アメリカ映画のジャンルに「クリント・イーストウッド」を入れても良いのでは、とさえ感じてしまいました。やっぱすごいわ(笑)。