「「目に物 見せてやる」」ガントレット komasaさんの映画レビュー(感想・評価)
「目に物 見せてやる」
組織での自分の立場を思い知らされる瞬間というのは受け入れ難いものだ。若い頃なら良い。毎日のように疑心暗鬼や葛藤を抱えながらもがく時期はあるし、心の中のバネに力がある。
しかし、若い頃に目指したものを諦め、無事に定年を迎えることを考えるようになると、心のバネは錆びついて反発させるのは並大抵のことではない。
しかし、主人公は立ち上がる。敵役への仕返しのためではなく、若い頃目指した姿を諦めてしまっていた自分を見返すために。
激しい銃撃のあと全ての決着がつく。
無言で立ち尽くす警官達。彼等の囲みの外にゆっくりと歩き去る二人。マリーの手にはショックリーがプレゼントしたバラが入った箱。自分を取り戻した二人の姿を見事に表している。
そして流れる穏やかなジャズとビル越しにしずむ夕日。それまでの銃撃戦が嘘のようなエンドロールだ。
クリント・イーストウッドは、いつ見ても格好いい。常に年相応の姿で、しかし誰も真似の出来ない色気を漂わせながらスクリーンに現れる。そして、自分も格好良く生きねばと思わせてくれる。
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