カラーパープル(1985)のレビュー・感想・評価
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見れば観るほど味が出るスルメ映画
1985年って時代に当事者ではないスピルバーグが描くには重過ぎる人種差別を白人をスポットでしか出さない事でまろやかにして、セリーやソフィアにシャグの三者三様の傷や強さに美しさにフォーカスして描いた傑作。女性の自立や尊重と、友情や愛を描いているけど…
幼い頃から何度も見ているうちに主人公のセリーを虐げていたミスターでさえ父親への恐怖から自分の人生を生きられずにいることに気付いた時に、この世界の何が歪んでいるかをいっぱい考える様になった。
差別はどこからくるかとか
差別とは何かとか
主要キャラが一様に何かに傷付いてる
それを無くすにはどうしたら良いかって
今の時代、セリーの時代より自由はあると思う。
でも不自由な時代でさえあった美徳、自分の選択した人生の向こうに何を持ってゆくべきか
セリーの優しさ
シャグの愛情
ソフィアのプライド
ミスターの失敗
ハーポの弱さ
少しでも欲しいもの欲しくない何かが見つかる映画ではないかと思います。
【幼き頃からキツイ人生を送って来た褐色人種の姉妹の半生を描いた作品。所詮、男なんて虚勢を張っていても女性が居なければ何もできない生き物なんです・・。】
■20世紀初めのアメリカ南部。
まだ幼い黒人の少女セリー(ウーピー・ゴールドバーグ)が父親の子供を産む。
(脳内、怒りで沸騰するが、我慢して鑑賞続行。)
だが、生まれたばかりの赤ん坊は父によりどこかへ連れ去られ、セリーは「ミスター」と呼ばれる男と結婚する。
セリーは、4人の子を持ち、ミスターの家で、家事に明け暮れる奴隷のような生活を送ることになる。
◆感想<Cauti内容に触れています>
・今作は、序盤は観た記憶があるのだが、何故か全然覚えていない。多分、序盤の展開を見た父が小学生には不向きと考え、チャンネルを変えたと思われる。
・序盤の展開は観ていてキツイが、セリーと妹のネティとの深い関係性が印象に残る。だが、ネティはアフリカに行ってしまう。
ー ”ネティを忘れないで!”と言う彼女の言葉が印象的であり、最後半の感動のシーンに繋がるのである。-
■私は、今までのレビューでも”黒人”と言う言葉を使って来たが、実際にアメリカの我社の社員である彼らと遊ぶと、その言葉が不適切である事が良く分かる。
彼らの肌は人種にもよるが、”黒”ではなく、太陽、もしくは月光の加減によっては、”紫色”に見えるのである。
尚、この辺りを映像化した作品では「ムーンライト」が秀逸である。
・妻サリーを使用人の様に使うアルバートが先見的思想を持つシャグを自宅に招いた際に、ロクな朝食を作れない中、サリーが作った朝食を平らげるシャグの姿。
ー そして、彼女はコッソリと店に来たシャグに対し”サリーのブルース”を弾き語る姿。可なり沁みる。-
<そして、数十年後、アフリカに行ったネティから手紙が届くシーン。
”私は生きているよ!”と言うメッセージの後、サリーの元に訪れたネティとサリーの大きくなった子供達の姿。涙溢れます。
今作は、見事なるヒューマン・ドラマであると私は思います。>
教養ものは苦手だけど頑張って観ました
現代とは程遠い時代設定の話なのでピンと来ない面はある。姉妹を嫁?養子?召使い?として頂戴したダニー・グローバー。嫁じゃない妹の方と強引に肉体関係をしようとして平和な日々が崩れる場面は、一気に「(姉妹が)可哀そう」と思うでしょう。
ただ映画そのものは、コミカルな場面も結構あり、辛い日々を軽減する狙いもあるのか音楽が「のどか」で、大自然の映像も良く、退屈さは少なく進んでいった。威張っていたダニー・グローバーから我慢して過ごすウーピー・ゴールドバークに少しずつ風向きが変わっていく。
世間を知る機会もなく、ひたすら尽くす、いや、尽くすしかない、そんな人生を送る姿に悲壮感が出ていた。
そして、気が強いポッチャリ奥さんと主人公がどう繋がりある関係なのか、わかりにくかったかな。D.グローバーの息子の嫁ってくらいしか認識できなかった。現代とはあまりに違う結婚への価値観を描きたかったのかもしれない。姉妹はどのような経緯で生まれたのか・・・孤児や黒人格差に比重を置いてるようにも思える。
D.グローバーは、妹から何度も届いた手紙を見せず、隠していたのは何故か?
1.妹と関係を持てなかった悔しさのようなものか
2.「いつか渡そう」と思っていた
→捨てたり燃やしたり、酷いこと言えば勝手に読んだりできる威張り様だったけど、少しは情があったと思いたいですね。
無冠に終わったとはいえ、アカデミー10部門ノミネートされただけのことはある。手紙をみつけた辺りから、何か教育番組を観てるような感覚に思えてきたので、私的には退屈な時間も多かった。どうもアカデミー系の作品は「教養」の比重が多くて苦手。観てる側は「勉強的な映画」を受け入れられるかどうかですね。また、人間関係がわかりずらい感もあり、しっかりと真面目に観る必要がある。
映像的にはさすがスピルバーグ。間の取り方や、対象物をアップに撮ったり、優しく刺激的に場面転換する術を味わえるので、退屈になると映像が観る気力を繋げてくれた。
妹まで手を出さず、そのまま3人で暮らしていればD.グローバーは善人と言えたでしょうが、欲は本能。頭で考えるより本能で行動していた時代かもしれません。現代も形は違えど、金などの力で叶えようとする部分は変わらない気はする。
威張れた相手がいなくなり次第に寂しくなるD.グローバー。ラスト、妹に会わせる段取りをしたのは彼だろうから反省の行動でしょう。馬と一緒に遠くから姉妹の再会を眺めてる時、友人女性シンガーは気付いているように見える。果たして和解したのだろうか?見届け、そのまま去っていったのだろうか?
「E.T.」は月をバックにした映像がトレードマークになってるけど、この映画では太陽をバックに姉妹が手を合わせている映像で終わらす点もニクイ演出ですね!
ウーピー・ゴールドバーグ映画初出演で熱演
総合80点 ( ストーリー:75点|キャスト:85点|演出:80点|ビジュアル:75点|音楽:70点 )
もう人権も何も無視で奴隷のような抑圧された生活を幼少期からおくる黒人女性の、一人の人としての自立への変遷を描く。
娯楽作品で大成功を収めながらも質の高い真面目な作品は作らずアカデミー賞とは無縁と批判されていたスピルバーグが、アカデミー賞を目指して制作したとされる作品。残念ながらアカデミー賞には候補に挙げられながら手が届かなかったが、質感は高い。
黒人差別の話はよく聞くが、この作品では黒人が黒人により差別され黒人の奴隷のようなひどい待遇を受ける。何せ物心つく前からこの生活だから、彼女にとってこれが普通として認識され諦めてしまっている。これが20世紀のアメリカなのかと思うと随分と酷い。
そんなまるで生きる価値が見出せないような人生を延々と見せられる中で、大人になり他のまるで生き方の違う黒人女性との交流の中で自我に目覚めていくセリーの姿をこれが映画発出演となるウーピー・ゴールドバーグが熱演した。最初から能力も美貌にも恵まれ自立していたシャグ役・強さをもっていながら潰されそうになってまた復活していくソフィア役の他の出演者の演技も良かった。
ソフィア役のオプラ・ウィンフリーが2013年にスイスの高級店で差別されたという記事が話題になったが、そのオプラがこれに出ていたのは知らなかった。ウィキペディアによると、オプラは親戚に性的虐待を受けて14歳で出産したそうで、本作品の主人公の生き様を地でいっているのも知らなかった。
物語は結末近くの展開が安直に感じる。あれだけの抑圧生活が一気に解放されるのは変だし、自我に目覚めたらその瞬間に彼女だけでなく外の世界も変わり何もかも全てがいい方向に運ぶのは違和感があった。家を出た彼女はどうやって生計を立てていたのだろうか。白人からの差別と迫害はなかったのだろうか。薔薇色の結末を素直に受け入れにくかった。
とはいっても彼女の最低の奴隷生活が終わり変わっていく姿は悪くない。若い頃に鑑賞したときよりも今のほうがより深く理解出来たように思う。
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