「ウーピー・ゴールドバーグ映画初出演で熱演」カラーパープル(1985) Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
ウーピー・ゴールドバーグ映画初出演で熱演
総合80点 ( ストーリー:75点|キャスト:85点|演出:80点|ビジュアル:75点|音楽:70点 )
もう人権も何も無視で奴隷のような抑圧された生活を幼少期からおくる黒人女性の、一人の人としての自立への変遷を描く。
娯楽作品で大成功を収めながらも質の高い真面目な作品は作らずアカデミー賞とは無縁と批判されていたスピルバーグが、アカデミー賞を目指して制作したとされる作品。残念ながらアカデミー賞には候補に挙げられながら手が届かなかったが、質感は高い。
黒人差別の話はよく聞くが、この作品では黒人が黒人により差別され黒人の奴隷のようなひどい待遇を受ける。何せ物心つく前からこの生活だから、彼女にとってこれが普通として認識され諦めてしまっている。これが20世紀のアメリカなのかと思うと随分と酷い。
そんなまるで生きる価値が見出せないような人生を延々と見せられる中で、大人になり他のまるで生き方の違う黒人女性との交流の中で自我に目覚めていくセリーの姿をこれが映画発出演となるウーピー・ゴールドバーグが熱演した。最初から能力も美貌にも恵まれ自立していたシャグ役・強さをもっていながら潰されそうになってまた復活していくソフィア役の他の出演者の演技も良かった。
ソフィア役のオプラ・ウィンフリーが2013年にスイスの高級店で差別されたという記事が話題になったが、そのオプラがこれに出ていたのは知らなかった。ウィキペディアによると、オプラは親戚に性的虐待を受けて14歳で出産したそうで、本作品の主人公の生き様を地でいっているのも知らなかった。
物語は結末近くの展開が安直に感じる。あれだけの抑圧生活が一気に解放されるのは変だし、自我に目覚めたらその瞬間に彼女だけでなく外の世界も変わり何もかも全てがいい方向に運ぶのは違和感があった。家を出た彼女はどうやって生計を立てていたのだろうか。白人からの差別と迫害はなかったのだろうか。薔薇色の結末を素直に受け入れにくかった。
とはいっても彼女の最低の奴隷生活が終わり変わっていく姿は悪くない。若い頃に鑑賞したときよりも今のほうがより深く理解出来たように思う。