劇場公開日 1952年9月4日

「頑張る全女性に対する応援ソングのような映画」風と共に去りぬ 野川新栄さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0頑張る全女性に対する応援ソングのような映画

2022年2月19日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

笑える

悲しい

楽しい

原作未読

映画ファンでありながら初鑑賞
これから毎年一回観たい
今度は映画館で観たいな
不朽の名作とか金字塔とか決して大袈裟ではない

1939年のカラー作品
まるで世界有数の美術館を訪れた数々の絵画を鑑賞しているような映像

ビクター・フレミング監督といえばもうー作『オズの魔法使い』だがそれはだいぶ前に鑑賞した

母がこの映画のチケットの半券を持っていた
若い頃に日比谷の映画館で観たらしくそれを大事に取っていた
値段はたしかたった300円
今のような味気ないものではなく映画のイラスト付きな半券だった
母の大切な思い出なんだろう
内容はよく覚えていないらしい

時は1860年代
南北戦争の真っ最中と開戦前と終戦後
場所はアメリカのアトランタ

風とは南北戦争のことで去るとは黒人奴隷によって支えられてた南部の白人貴族社会のことらしい

少女漫画原作の単純なラブストーリーかと思ったらそうじゃなかった
キャスト欄を見るとクラーク・ゲーブル演じるレット・バトラーは主役のような扱いだが実際は脇役に過ぎない
主役は間違いなくヒビアン・リー演じるスカーレット・オハラただ1人
彼女の半生を描いた大河ドラマ
3度も結婚している
親が決めたわけでもなく特に好きでもない相手と結ばれている
1人目は好きな男が結婚したのでその腹癒せにその弟と→戦地で病死
2人目は自分の土地を守るためお金目当てで妹のフィアンセを略奪婚→いざこざで射殺される
3人目はレット・バトラー→愛想を尽かされ別れる2度も

わがままで行動力があり気が強い女スカーレット
美人で育ちが良いせいかモテモテ
メアニーの方が模範的な女性でスカーレットは小公女でいえばセーラではなくラビニア
山田栄子に剃刀を送るような人にはラビニアもスカーレットにも共感できないだろうし共感できないと映画を楽しめない人にはこの作品は向いていない

ハッピーエンドではない
彼女の生き様が大事
こういう生き方もあるんだよと指し示すことによって公開当時の若い女性たちに風穴を開けた点は大きい
古臭い価値観を壊す全女性に対する応援歌みたいなものだ
それに比べたら戦争や黒人奴隷の悲惨さが物足りないことなんてさほど重要ではない
ただ単にグロ動画を観たいだけだろう
瑣末にかかずらわって大局を逸する

僕は個人的には高級で知的なコメディーだと思う

メイドのマミイ役のハティ・マクダニエルがいい味を出していた
この作品で助演女優賞
黒人初の偉業

黒人俳優たちの言葉遣いが気になった
特に語尾
ステレオタイプな頭が悪い田舎者みたいな喋り方
こういう翻訳は向こうからも要求があったのだろうか
よくわからない

オープニングクレジットの前に序曲
本編終了のあとにexit music
いらない

黒人差別を正当化している美化していると言いがかりをつけている輩がいるがはっきり言って共感できない
抗議する側が常に正しいという思想は自分にはない
南部の白人目線だからまあこうなるだろう
ウダウダ文句を言わず黒人目線の『風とともに去りぬ』を作ればいい
とはいえ手塚作品のような配慮は必要になってくるだろう

借金を断られ逆ギレするスカーレットが面白かった

不謹慎だけど娘が父と同じ死に方だったので笑った
友人もお産で亡くす
231分だけど終盤ちょっとたたみかける展開

野川新栄