華氏451(1966)のレビュー・感想・評価
全3件を表示
1966年の未来を観る
家の中が全てスタイリッシュで素敵すぎてカラー映画で良かったなと思う。
昭和41年だと日本では分厚いブラウン管のテレビしかなかったはず。写真さえ白黒写真が主流の時代だ。
なのにリビングには大画面のカラーの薄型テレビが当たり前のようにある。
一方で電話はレトロで電話交換手も出てくる。スマホは存在しない。
消化士の職場には美味しそうなジュースサーバーが!
出動にポールを使うか螺旋階段を使うか選択肢があるところも良い。
原作で出てくるのは地下鉄だが、モノレールから昇降階段が降りてくるところも素敵なポイント。
クラリスは最後まで出てくるし、原作とは違う部分もあるが簡潔にまとまっていて見やすかった。
クラリスとリンダを一人の女優が演じている所も最高だ。
本を読む人は迫害され、本は燃やされ、本を愛する人々は本を暗唱して本そのものとなってゆく。
暗唱シーンには日本語も出てきて嬉しかった。
特に、おとぎ話のように甥っ子に本を語り継承する瀕死の老人の姿をフォーカスしたところは考えさせられる。
本を読む人が偉いのではなく、本の中の知識を後世に言葉で伝えていくことが大切なのだろう。
1966年はまだ生まれていない、知らない時代なのに、古く感じるどころか新鮮に感じる部分ばかりだ。
レイ・ブラッドベリとトリュフォーの化学反応は素晴らしかった!
トリュフォーらしくないが
本来、火を消す役目だった消防士が、本を焼く役目に変わっていたのが皮肉で面白い。
トリュフォー監督にしては珍しくセリフが英語だ。しかもこの時代にしては珍しく、アフレコが余りずれていないので、見ていて気持ちがいい。この時代、巨匠と呼ばれている監督でもアフレコまでは力を入れていないのか、結構雑な作りが多い。私の場合、最初は字幕を見るが、2回目以降は内容がわかっているので、字幕を見ず、画面のみに集中して見ている。それで、当然、俳優のしゃべる口が目に入るので、アフレコがずれていると結構気になり、最初に良かったと思った作品でも評価を低くしてしまうことがある。
この映画は50年前の作品で、近未来を描いているせいか、あまりトリュフォーらしさが感じられない(悪い意味ではないが)。ただ、最後の「本の人々」のコミュニティーで、何人もの男女が、雪が降る中、色々な言語(日本語もあった)で朗読しながら散歩するシーンは大変美しく、トリュフォーらしくて一番気に入っているシーンだ。
なお、小学校にいた小学生のひとりと、消防車を橋の上から母親と見ている小学生がまだまだ幼いマーク・レスターだった。
フランス製のSFって同じ傾向あるね
フランソワ・トリュフォー監督の1966年作品。初のカラー作品のSF映画。
正直に言って66年製ということもあり色々と時代を感じる。
SF的なビジュアルも少なくシンプルで情報量も少ない。ちょっと…というシーンも少なくない。
しかし物語はまさにSF。ディストピアを描いた映画の原点とも言えるんじゃないかな。
ただフランス映画でよく見る、男女の退屈に等しい長い会話劇がメインだったりはします。
トリュフォー監督とSFは相性が良いとはやはり言いがたいかなやっぱり。
しかし書物に対する深い愛情はひしひしと伝わってはきました。
面白くなってきた終盤をもっと詳細に描いたら別の映画として作れるんじゃないだろうか、とも感じましたね。
全3件を表示