影の軍隊のレビュー・感想・評価
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50年が経過した今なお、リアルな凄みに震えっぱなしの渾身の一作
メルヴィル作品の中でも、最もリアリステイックな視線が貫かれ、地響きするほどの凄みに震える一作だ。「サムライ」や「仁義」などで知られるメルヴィルは、ナチス占領時代、この映画と全く同じ立場でレジスタンス活動に身を投じていたという。彼は自らの体験を決してそのまま描くような真似はしない。それゆえストーリーは全くの別物ではあるが、そうであってもあらゆる細部に、彼自身が実際に見たり、触れたりした記憶が直接的ではない形で刻印されているのは確かだ。
あからさまな感情を挟まず、ストイックに淡々と重ねていく描写が特徴的だ。それゆえ登場人物の「行動」が個性を規定する要となる。あのメガネ姿の中年男に自ずと魅了され、それにも増して、組織を束ねる小太りのおばちゃんの、あの力強い統率力に惚れ惚れしてしまうのも、きっと「行動」のなせるワザだ。公開から50周年が経つが、古臭さなど微塵も感じない、心底しびれる作品であった。
『仁義』の監督でしたか。納得。
先ずは原作があるので、歴史的史実ではない。つまり、かなりの脚色がある。
今まさに銃殺する時に、一旦、銃殺される者を逃して、横に開けられた大きな窓から脱出が成功する。しかも、脱出を助ける側と助けられる側との意志の疎通が無い。つまり、この状況で助かる確率は数学的に〇。知らないで見たが、この映画の監督とは『仁義』の監督でしたか。納得。そう思って見ると!ワンカット、ワンカットが中途半端な尺だし、余計な演出が多かったと思う。偏見ではない。また、カラー映画なのに、暗くてコントラストが弱いので、寝ぼけた朝靄の中の幻想の様になっている。効果だとすれば、逆効果だと思う。ペタン政権に対するフランス人の贖罪にもなっていない。到底、共感できる内容ではないし、映画としても、緊張感のかけらもない映画だと、僕は思う。
勿論、レジスタンスの攻防が一本化されないのは歴史的な事実。連合赤軍の様な事はあっただろう。共通しているのは、ユダヤ系が一掃されているので、ユダヤ人に対する偏見は残っていた。
『収容所には沢山の人種が収容されている』と言うセリフが字幕されるが、全て、インド、ヨーロッパ人種であり、所謂、白人。『字幕』か『セリフ』が間違っている。『沢山の民族』と訳されるべきだ。その点が、ほぼ無視されている理由は、この監督が、ユダヤ系やロマ人を他の人種と見ていた理由だと思うし、この監督は差別主義者だと思う。ナチが逃げ帰ったフランスにも土着のナチは沢山いたと言うことだ。
なんという虚無感、無慈悲さだろう それが映像に反映されている
激渋!しびれました
メルヴィル監督最高!
ドイツに占領されたフランス
冒頭、主人公がフランス警察に車で連行されている
しかしどうも様子が変だ
警官がトゲトゲしくない
当たりが柔らかいのだ
着いたところはレジスタンス専用監禁施設
なんという皮肉
ドイツ軍に対して抵抗運動を行っている愛国的なフランス人を、当のフランスの警察が逮捕して、ちょと前までドイツ兵捕虜を入れていた元捕虜収容所に連行しているのだ
フランスは副首相だったペタン元帥が、ドイツに降伏したからこうなったのだ
元帥はフランス中部の町ヴィシーに新首都を置いたことから「ヴィシー政権」と呼ばれ、ナチスドイツの間接統治に協力しているのだ
主人公フィリップがドイツ軍司令部が接収しているホテルマジェスティックから脱出して逃げ込んだ散髪屋に掲示してあったのはそのペタン元帥を非難するビラだ
ビラには「ペタン元帥の公約と実態」と書かれている
フランスを救う為にドイツ軍に降伏し協力する
平和を公約しても、フランス人の自由と人権は蔑ろにされているのだ
主人公はドイツと戦っているだけでは無い
そのヴィシー政権とも戦っているのだ
フランス人が、ナチスドイツの為に同じフランス人を逮捕する
フランス人同士で敵対し、殺し合うのだ
だから警官達は、仕事であり命令なのだから、レジスタンスを捜査し逮捕する
従わなければ首にされるか、逮捕される側になるからだ
しかし彼らもまたフランス人であるから、逮捕したレジスタンスを邪険には扱いたくないのだ
しかし、彼を動かす命令は警察幹部から下されるのだが、本当の命令の出先はドイツ軍なのだ
フランス人がフランス人と敵対する
自分や家族を守る為には、同じフランス人を売る人間もでる
ペタン元帥はパリや市民を守る為に降伏してナチスドイツに協力しているのだ
一般人がそうなったところで当然だ
しかしそれでよいのか?
自由の国フランスが、全体主義のナチスドイツに屈伏したままで良いのか
有り得ない!
その代表が前国防次官のドゴール将軍で、ロンドンに逃れて自由フランスと呼ぶ亡命政権を建てレジスタンスを指揮しているのだ
劇中、皿型ヘルメットを被ったフランス兵が歩哨にたっている建物には、自由フランスのしるしである複十字のロレーヌ十字の紋章が掲げられている
それがフランスの亡命政府なのだ
ロンドンのとある邸宅でルクに勲章を授けたのは、そのドゴール将軍だ
1971年の映画「ジャッカルの日」で暗殺対象になる後のフランス大統領だ
日本の天皇陛下のように、元首を写すのは畏れ多いのか顔はあまり写されないし、台詞もない
主人公達は、そのドゴールの配下として、ドイツ占領下のフランスで戦っているのだ
それが影の軍隊だ
敵はナチスドイツの占領軍だ
しかしその手先であるフランス警察や、フランス人自身も敵なのだ
味方も多くいるだろうが、いつ裏切るかも知れないのだ
レジスタンス仲間であっても、いつ逮捕され拷問を受けて口を割るかも知れない
裏切ったなら、例え仲間であっても殺さなければならない
同じフランス人であっても、仲間であっても敵に協力したなら敵なのだ
殺さなければならないのだ
それがむしろ情けなのだ
裏切り者として生きていくことの悲惨を思えば
なんという虚無感、無慈悲さだろう
それが映像に反映されている
彩度がおとされて青みがかった画面は、常に寒々としている
登場人物達は怒鳴らない、大声も上げない
取り乱した一人だけだ
普通の声ですら話さない
ぼそぼそと言葉を選んで少しだけ小声でしか話さない
暴力のシーンは行為そのものは写されない
結果のみ映像でしめされるだけ
笑いもない
抑制され、そぎ落とされたミニマムな映画だ
それが美しい
主人公は中年男
官庁の幹部に相応しい男、大企業の重役のような見た目
ヒロインはアラフィフの中年女、しかも小太りの見た目は普通のオバサン
この二人が中心となって物語は展開される
淡々とこけ脅かしはない
しかしスリリングでサスペンスなのだ
強烈に惹きつけられてしまった
北野武監督は明らかにメルヴィル監督の影響を受けていることが本作では特に強く感じる
マチルダ役のシモーヌ・シニョレは48歳
ご存知1952年マルセル・カルネ監督の名作「嘆きのテレーズ」のヒロインで主演したのは31歳の時
さすがに歳に勝てないものの、全盛期の超がつく美貌と肢体の面影は、なんとなくいい女オーラを発していてしっかり残っています
イブ・モンタンの奥様です
フィリップが救出された時、その手を最初は片手で、そして両手で握るシーン
彼を見つめる眼差し
すぐに放される手
胸が震えるような大人のラブシーンでした
色恋を超えた世界なのです
超名作です!
レジスタン運動に生死を賭けた人たちの記録
1942年から1943年にかけてドイツ軍占領下にあったフランスのレジスタンス運動に生死を賭けた者たちの壮絶な悲劇。フィルムノワールの後継者メリヴィル監督の抑制された静寂な演出タッチが全編を覆い、その暗鬱さが当時の時代の空気感とフランス人の息苦しさを表現する。兵士同士の戦闘だけが戦争の悲惨さではないことを、改めて強く認識しないではいられない。抵抗運動の固い絆の根源は祖国愛でも、裏切り者に対する躊躇ない制裁には、人間の追い詰められた極限状態の残虐性が露になる。主人公ジェルビエが体験する、ゲシュタポのゲーム感覚の処刑のやり方にも驚嘆するが、人間の尊厳を凌辱する意味では共通するのかも知れない。
物語は、イギリスの潜水艦でロンドンに密航、同志がゲシュタポに拘束された知らせを受けて飛行機からパラシュート降下で帰国するところや、ドイツ兵に変装して監禁された仲間の救出を試みるところなど、緊迫した場面が続く。そして、女闘志マチルダを射殺したレジスタンス仲間4人の男たちもそれぞれ道半ばで殺される結末が、何ともやるせない。リノ・ヴァンチュラ、ソモーヌ・シニョレ、ジャン=ピエール・カッセル、ポール・ムーリスとフランス俳優の真剣な演技が、映画を最後まで惹きつける好演。
醜悪
タイトルから巴里を守ったレジスタンスの活躍ぶりを描く戦争映画かと勝手に想像していたがまるで真逆、レジスタンスの内側を赤裸々に描いて、レジスタンスへの賞賛や美化を真っ向から覆している。正規軍であれ陰であれ戦いは綺麗ごとでは済まされないというのは分かるが見方によってはナチスもレジスタンスも非道さにおいてはどっちもどっちもの感さえ覚える。
連合赤軍の事件が頭をよぎる。主人公は仏レジスタンスの裏切り者粛清役だから仲間と言えど情け容赦なく殺す、それだけの話を延々2時間20分も見せられては病気になりそうだ。
歴史とはそういうものだと言われれば善いも悪いもなく、醜悪なだけだ。
けっこうよかった
フランスのナチスに抵抗するレジスタンスの話で、リーダー格のおばちゃんが仲間を収容所から救出するために、普段は地味なのにセクシーな格好に変装しているのが面白かった。その変装はボツになっていて安心した。見ていてやたらと緊張感がある。ただとても長い。
The French Resistance 体験談
フランスに侵攻したナチスとレジスタンスの密かな戦いの日々を描いた作品。
何の説明もなく淡々と始まりますので、歴史に明るくないと会話の内容がすっと理解できません。ナチスに降伏し休戦を申し入れたのがヴィシー政権のペタン。亡命先のイギリスで自由フランスという対ナチス組織を結成したのがド・ゴール。ロンドンでLuc Jardieにメダルを授与していた長身の男性がド・ゴールなのでしょうね。
主要登場人物は、実在したメンバー達を参考に創り上げたようです。
紅一点Mathilde姐さんの澄んだ目元と存在感が魅力的でした。彼女の貫禄を支える土台は何気に華奢な美脚。
冒頭で「過ぎ去った愛おしい青春」云々と出て来て、確かに若気の至りで参加した人もいるのでしょうが、青春と片付けるには残酷過ぎる思い出です。
捕まったら拷問で死ぬか、口を割って釈放後に仲間に殺されるか。いずれにしろ救出されなければ逮捕は死を意味する。どうせ死ぬなら味方の手で楽に死ぬ方が良いのだろうか…。そんな危険を覚悟して日常生活の裏で静かに戦った民間人達。
家族間でも秘密な訳だけど…、弟は最期まで知らず、兄はボートで密かに驚いていたのだろうか。それとも…知っていた?
戦闘機内のサービスが至れり尽くせりなのが意外でした(^^)。
影で戦い、影で捕らえられ、影で抹殺された人の数だけあるドラマ。精一杯悲惨な現実に抵抗した彼らの足跡を学ぶ良い機会になりました。
古いのにスリリング
昔、テレビで吹き替えでやってたけど、何だか暗い映画でアクションが少ないので真面目に見てなかった。今回見直すと、さすがに大俳優が出ているだけに重々しく真剣に見てしまった。
これを見て、だから国防が必要だろと言う人もいるだろうけど、そんな単純なものじゃない。ドイツ国内だって、ナチスと闘った人達がいる。ナチスという大きな悪と闘うには如何に大変か、だからこんな勢力が育つ前に日頃注意して各国が力を合わせて潰して行かなきゃってことだと思ったけどね。まず、少なくとも日本は再びものが言えない、言ったら逮捕される昔のような国に戻らないように、今生きている日本人に努力する責任がある。
レジスタンスの悲哀
ジャン=フランソワの独白もあるが、ほとんどがジェルビエ(ヴァンチェラ)のモノローグ。イギリスへ渡ったものの、本国のことが気になり即座に帰国したジェルビエ。同志たちと合流するも、親友でもあったフェリックス(ポール・クローシェ)がナチに捕まり、それを救出しようとするのが前半のヤマ場。そこで活躍するのが女性闘士マチルド(シニョレ)だ。しかし、ジャン=フランソワは作戦に加わらず、自ら捕まりフェリックスの最期を共にする。自らも拷問によってズタズタにされながら、瀕死状態のフェリックスに青酸カリを与えるところなんて悲しすぎる。
具体的なレジスタンスのテロ行動なんて一切描かないで、仲間の逮捕、救出劇がメインの映画で、しかも淡々と描かれているところなどは戦争映画とは感じさせないほど。終盤にはマチルドが捕まり、「仲間のアジトを教えるか、娘をポーランドに送り慰み者にするか」という選択を迫られ、真の仲間のアジトは教えなかったものの同志2人を逮捕させられた。そこで、ジェルビエはマチルダ暗殺を指示する・・・
レジスタンスの虚しさ、非情さを訴えてくる映画。ナチに対する憤りよりも、仲間を殺さねばならない悲しさ。リーダー格の非情さに対して、それを拒否しながらも実行しなくてはならないバイソンやマスク。最後のテロップでは皆ナチによって殺されたようだ・・・レジスタンスの陰の部分を描いた傑作ともいえる。
ドイツ軍占領下、フランスレジスタンスの闘争を描いた悲劇
ナチの情報を手にいれ味方に流し捕まった仲間を助ける。捕まり拷問され処刑される。騙す隠れる欺く。青みがかった映像でほとんど夜のシーンだが暗くならずによく見える撮影方法に唸った。ラスト彼らの行く末がテロップで紹介させるが、みんな死を遂げる事実に絶望的な気分に叩き落とされる。
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