女だけの都のレビュー・感想・評価
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個人の尊厳
コスチューム・プレイか…と思って身構えたが、見てみると、人間が人間らしく生きる様をチャーミングに描いた怪作だった。市長だ助役だと威張っていられるのは、そこが閉じたコミュニティである限りなのである。当時の女性らしく、市長の妻がコミュニティにとらわれているのに対して、「娘にはベネチアを見せてあげたい、海を見せてあげたい」と望み、個人の意志を尊重した結婚をさせてあげる(市長は娘を自分の所有物として金で売ろうとするのだが、市長の妻もそんな感じで結婚したんだろうなと思わされる)。しかも外敵と思われたスペイン公爵とも尊厳を保った情交を結んでみせる。庶民の女性たちも、徹底して自分の感情欲望信念に即して動いてやる、ということで、ハラハラさせつつもうまく終わるところがとてもよかった。
カラーで観たいと思う白黒映画
やっぱり女は強いのよ☆
やっぱり「女は強い」。男は女なしでは生きられないけど、女は男なしでも十分生きていける。生活に対する知恵が働くし、身の周りの世話がキチンとできるからだ。ウーマンリブ映画だが、この作品の面白いのは舞台が中世の所。まだまだ女性に対する差別が激しいこの時代だからこそ、女性が威張り散らすだけで脳の無い男性をやりこめるところが爽快だ。さらに、公開当時ではきっとまだタブーとされているであろう、女性の性意識もあっけらかんと描かれていてニヤリとさせられる(部屋ごとの男と関係を持っちゃう宿屋の女将とか)。興味深いのは、男性と女性の結婚観の違い。特に中世では娘の結婚は父親の意見に左右される。欲深い父親が、娘の好みとは真逆のとんでもないイヤな男と無理やり政略結婚させるこの時代でも、恋する乙女の心は変わらない。貧しくても愛する人と結婚したいのだ。そしてそんな娘の気持ちを誰よりも解ってくれるのは同じ女である母親。何人もの子供を育て上げ、横暴な夫に従えて来た母親達は、攻めてきたスペイン兵を手なずけ、平和をもたらし、愛し合う者たちを無事結婚させてやる。このバイタリティー、本当に女は強いのだ。素晴らしい女性賛歌であるとともに、上質なコメディーの秀作。
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