劇場公開日 1969年9月9日

「アメリカ的貴族の没落」泳ぐひと シューテツさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5アメリカ的貴族の没落

2023年9月26日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

私の鑑賞記録によると本作を最初に見たのは1976年となっていて、当時自主上映会での鑑賞でしたが「変わった映画だなぁ~」と思いながらも妙に心に残った作品でした。
それから全く見る機会に恵まれなく、是非もう一度見たいと思っていた作品の中の一本でもありました。
で、今回ほぼ半世紀ぶりに鑑賞したのですが、今回は特別変わった作品とも思えず、非常に明瞭に理解できました。
半世紀以上映画を見続ければ、鑑賞レベルも少しは上がったということでしょうか(笑)というか、当時はまだこういう映画の語り口に慣れていなかったのでしょう。
特に本作の主演がバート・ランカスターということもあり、のちに見たヴィスコンティ監督の『山猫』や『家族の肖像』の系譜でもあり、ヴィスコンティが貴族社会のデカダンスを描いていたように、本作ではアメリカのブルジョワジーの没落を描いた作品でもあり、有産階級のステータスでもあるプール付きの豪邸の知人宅を巡るという不思議な構成ながらも、少しずつ彼の正体が解き明かされていくという手法で、最後に市民プールを追い出され、辿り着くのが廃墟と化した我が家であるという、時代的には資本主義社会に対する危機感や皮肉を描いた、アメリカンニューシネマの幕開け的な作品に位置するのでしょう。

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シューテツ