「ビガス・ルナが行きていたら?の「もしも」を妄想したくなる。」おっぱいとお月さま 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
ビガス・ルナが行きていたら?の「もしも」を妄想したくなる。
今は亡きビガス・ルナと、スペインの奇才としてライバル視されていたアルモドバルの現在の巨匠っぷりを思うと、ビガス・ルナが生きていればどんな映画を作ったのだろうと考えてしまうのだが、いや、ビガス・ルナの全盛期は一にも二にも『ハモン・ハモン』であり、歴史にもしもはないという以前に、ファンの勝手な願望でしかないなと思いなおす。しかし、『おっぱいとお月さま』を観ると、やはりビガス・ルナにはもっと輝かしい未来が待ち受けていたのではないか、と妄想してしまう。
ほろ苦い青春恋愛ものであり、どうしようもない男と女のラブストーリーであり、リアルな庶民の生活と突拍子もないファンタジーを同居させ、不謹慎でありつつも文芸映画の趣きと上品さを兼ね備えている。『ハモン・ハモン』のインパクトには及ばないにしても、もっといろんな引き出しがあったに違いないし、まったく別種の監督に変貌していた可能性もある。今はとにかく、この時代のマチルダ・メイをフィルムに焼き付けてくれていたことに感謝したい。
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