「詩と演劇と映画のジャン・コクトーの不思議な世界」恐るべき子供たち Gustavさんの映画レビュー(感想・評価)
詩と演劇と映画のジャン・コクトーの不思議な世界
原作はジャン・コクトーの代表作。物語は実の姉と弟の愛情と依存を探るもので、最終的に悲劇に終わる衝撃的なストーリーだけを追っては理解できないものがある。それでも映像は美しく、終始不思議な世界観に誘惑されるような感覚に陥る。ここに現実的な感覚を当てはめて解釈しては、コクトーの美学に到達できないのだろう。やはり、詩であり演劇であるコクトーの独特な世界だ。
それでも、ほんのワンカットだが、この姉弟の亡くなった母親の顔が映し出される。それはとても無残で哀れな表情を見せていた。長い間の病苦を受けた顔に見える。この母の看病をしていた姉弟は、普通以上の助け合う努力をしていたに違いない。二人だけの生活が全てになっていた。そして、その姉が弟に対する愛情や嫉妬を強く意識したのが、アメリカ人の富豪の夫を交通事故で失ってからだろう。弟は学友との付き合いや理想の女性を見つけても、積極的に行動を起こせない男である。どうしても世話役に付いた姉の独占欲が強くなってしまう。姉は母親を兼ねて愛情を弟に向け、誰にも渡せないところまで行ってしまった。家族の愛情から他人との愛情の成長を経ることが出来なかったある姉弟の運命的な悲劇の物語。つまりは、姉も弟も母親からの愛情に飢えていたことが、この悲劇の発端ではないだろうか。
1977年 3月18日 池袋文芸坐
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