劇場公開日 1958年12月25日

「新時代のテキサスの夜明けを、対比する相関図で描いた濃密な人間ドラマ」大いなる西部 Gustavさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0新時代のテキサスの夜明けを、対比する相関図で描いた濃密な人間ドラマ

2020年9月26日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル、TV地上波

舞台は、南北戦争後の1870年代のテキサス州サンラファエル。アメリカ横断鉄道が開通した頃でもまだ近代化される前の古い西部の因習が強く、ジェームズ・ディーン主演の「ジャイアンツ」にある石油ブームの30~40年前になると見られる。東部から元船長のグレゴリー・ペックが婚約者のキャロル・ベイカーに会いに遥々訪ねることから物語が始まる。ペックの暴力否定の価値観が終始一貫した主題だが、拳闘の男の対決や旧時代の紳士の決闘のシーンも組み込まれた、見応えのある西部劇になっている。また、すべての登場人物の交錯した対比の相関図を展開させる、予想困難な面白さがある。東部と西部の物事の解決法の違いの非暴力と暴力。ベイカーを挟んだペックと牧童頭チャールトン・ヘストンの恋敵。水源のある土地ビッグ・マディの利権争いで睨み合うレリル家とヘネシー家。両家の親子関係にある世代対比。特にヘネシー家の父バール・アイブスと息子チャック・コナーズの愛憎劇が深く悲しい。そして、婚約者ペックに不信感を募らせるベイカーと徐々にペックの信念に共鳴し親愛の情に変わるジーン・シモンズの女性の比較。5名の脚本家によって練られた、それら登場人物の心境の変化が見事に描かれている。悠々としたワイラー監督の演出で描かれた広大なテキサスの大地を舞台に、濃密な人間ドラマが繰り広げられる。カメラワークやカメラアングルの無駄の無さや表現の深さ、カット繋ぎの自然さと緊迫感のメリハリ、そしてユーモアとシリアスのバランス。名匠ワイラーの演出美が素晴らしい。演技面では、アカデミー助演男優賞のバール・アイブスが抜きんでた存在感と演技力。ペックもシモンズもヘストンもコナーズもそれぞれに良い。ヘネシー家と比較して悪役に回るテリル家のチャールズ・ビックフォードとキャロル・ベイカーは少し損な役柄であった。
ラストのクライマックスの、一人谷に馬を進めるビックフォードを捉えたシーンでは、岩陰からヘストンが現れ、続いて数人の牧童の集団が追い掛けてくるのをワンカットで撮る。その緊張感を生む演出がいい。そして旧世代の対決の結末を俯瞰で捉えてアップカットを挟まない客観的な視点が、時代の終わりを冷静に印象づける。3時間に及ぶ長尺の大作だが、ワイラー監督の演出を堪能していれば、ダレルことなく観終えてしまう名作である。

Gustav
こころさんのコメント
2024年7月21日

Gustavさん
どの作品も見応えありそうですね 👀
キャストもゴージャス ✨
NHK-BS辺りでウィリアム・ワイラー監督作品特集として放映して頂けると有難いのですが ☺️
その際には見逃さないよう録画しなきゃ。
教えて頂き有難うございます (^^)

こころ
こころさんのコメント
2024年7月20日

Gustavさん
コメントへの返信を頂き有難うございます。
バール・アイヴス、「 エデンの東 」では人の良さそうな保安官役なのですね👮‍♂️
テレビ放送されたら録画して観なければ👀
ワイラー監督 = 行き届いたきめ細かい演出。撮影にかなりの時間を要したでしょうね。

こころ
こころさんのコメント
2024年7月20日

Gustavさん
バール・アイヴス、実直で揺るぎない信念を持って行動する役柄がとても似合っていました。
手荒なだけの人物かと思っていました。

こころ