「タイトルなし(ネタバレ)」桜桃の味 maduさんの映画レビュー(感想・評価)
タイトルなし(ネタバレ)
劇伴がなく環境音のみが響き、車がイラン郊外を走る風景と車内の会話が中心。
死にたがりの主人公は、自殺を手伝ってくれる人を探すが怖がられたり諭されたりして断られる。
最終的に出会った老人は、それまで車に乗せた人たち違って画面が変わって気がついたら車に乗っているので、主人公の妄想の都合の良い夢や幻想の人物の様にも見える。最後まで見ると、主人公は死にたいのではなく人生に意味を見出すための物語が欲しかったのかと思った。人生に意味などないのが真実かも知れないが、今は人生が無意味に見えたり絶望に苛まれているかもしれないないが、生きていれば案外良いことが起こるかもしれない。と語りかけてくる様な映画。
最後のシーンは映画撮影のドキュメンタリー映像が突然流れ出し行進していた兵士達も主人公もにこやかな雰囲気でくつろぐ姿が写っていて
人生が映画だとしたら、もし終わらせたいと思ったタイミングがあっても続きを撮って欲しい。
あとで観たら良い映画になるかも知れないよと言わんばかりだ。
目の前で自ら人生を終わらせたいと思っている人がいたとすれば、親しくない人でも
できれば生きてほしいと思う一方で突き詰めて考えるとその人が心の底から死を願うのを止める権利はあるのだろうかと思ってしまう私にとって
この映画のできれば生きてみてほしいとゆう控えめな願いが優しく見えた。
イラン映画といえば、今ことごとく
社会問題を扱った作品を撮った制作チームが国外へ逃げているイメージがある。
この作品は、社会問題や政府の批判を描いていないので監督は国内で活躍できているのかもしれないが
この物語の背景にはイランで生きる人々の生活が写されていて、人々を描くことでイランの社会が写しだされているように思った。
配信で鑑賞