「【”君はもう美しい夜明け、星空、夕陽を見ないのか。泉の水を飲まないのか。桜桃の味を忘れてしまうのか・・。”命の大切さを淡々と、けれども心に染み入るトーンで観る側に問いかけてくる、見事な映画である。】」桜桃の味 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”君はもう美しい夜明け、星空、夕陽を見ないのか。泉の水を飲まないのか。桜桃の味を忘れてしまうのか・・。”命の大切さを淡々と、けれども心に染み入るトーンで観る側に問いかけてくる、見事な映画である。】
ー 序盤から、中年男は砂埃舞う九十九折の山道を、独り車を走らせる。
そして、3人の男を次々に車に乗せ、”ある願い事”をする。ー
<Caution ! 以下、内容に触れています。>
1.クルド人少年兵に男が言った言葉
”20万トマン渡すから、朝、穴の中の私に”バディさん、バディさん。朝が来た・・”と、呼びかけて欲しい。応えなかったら、シャベルで土を掛けて欲しい・・。”
”銃とシャベルと何が違うんだ。”
男の奇妙な問いかけに戸惑い、逃げ出す少年兵。
ー 会話の中で、クルド人問題にも、やんわりと触れている・・。ー
2.アフガン戦争から逃れてきた、アフガン人の神学生の青年との会話
自殺について語るバディ。だが、その理由には言及しない。
答える神学生。”コーランには、自殺は誤りだ、と書かれています。”
ー 現在、アフガニスタンを再び支配したタリバンは、多くのアフガニスタンの民に何を強いてきたか。自爆テロは、”ジハード”と言う名を借りた自殺教唆ではないのか!
そして、バディが自殺の理由を口にしないのは、故アッバス・キアロスタミ監督がどのような理由であろうとも、自殺全般を否定しているからではないか?ー
3.トルコ人の老人、バゲリとの会話
老人は、且つて、自分も、自殺を考えていたと話し出す。
”縄を掛けようとした木に成っていた熟れた桑の実の美味さ。美しい夜明けの太陽、夕暮れを又見たくはないか。泉の水を飲みたくはないか・・。桜桃の味を忘れてしまうのか!”
ー 老人が自らの経験を基に語る、自然や人生の美しさを表現した、言葉のセンスの素晴らしさに唸る。そして、直接的に、自殺を止めるのではなく、間接的に自殺を止めようとする姿にも。ー
4.老人の話を聞いて、腕を組んで沈みゆく夕陽を見つめるバディの姿。
<ラスト、バディは”何故か”タクシーに乗って、九十九折の山道を登って行く・・・。
そして、画のトーンが変わり、故アッバス・キアロスタミ監督がスタッフたちに、撮影の指示をするシーンや、バディを演じた役者が映るシーンに切り替わる・・。
何とも、見事な作品である。>
NOBU さん
お便りありがとうございました。
かなり以前に観た本作。まざまざとそのシーンを思い出させていただきました!
劇中の〈対話〉と〈沈黙〉の繰り返しは、あの「星の王子さま」の旅のように、人生に関わる不思議な哲学を余韻に残すかも。
そして、なぜだろう、スタッフが登場してしまうエンディングにこみ上げる感動・・
ひとつの映画を別々に観て、このサイトで思いを共有できるって、いいですね。澄んだ目の方だなぁとNOBU さんのことを想ったりして。
(フォローのボタンをもう1回押したい。それじゃダメなんだけど😉笑)。
そういえばネット配信の会社を変えられたんでしたね?ポツリポツリと“毛色の違う映画”へのレビューで驚いています。
配信会社によってアップリストがこんなにも違うのだなぁと。
ではでは きりん