「自殺埋葬人」桜桃の味 odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
自殺埋葬人
街中を離れイランの荒れ地をレンジローバーが只管走り回る、殺漠とした風景ばかりだ。
何やら助っ人を探しているらしいが30分たっても何のための人探しか分からない、二、三人に声を掛けるが胡散臭いと思われて儲け話にも乗ってこない。車に誘ったクルド人の若い兵士に頼み込む、20万(貨幣単位不明)やるから自殺を助けろという突拍子もない話、荒れ地の木の下の穴に睡眠薬を飲んで眠るから翌朝来てみて死んでいたら土をかけて欲しいと言う。若い兵士はドン引きで逃げてしまう。次はアフガン人の神学生、当然拒否。何故死にたいのか、何故そんな荒れ地で土に還りたいのか、動機の説明は無い。「話したところで同情はしても私の心の痛みは共有できない」と突っぱねる。
最後に話にのったトルコ人の老人は自分も自殺しかけたがロープを掛けた木の実を偶然口にして考えを変えたと言う、サクランボかと思ったら桑の実という、後半のセリフでは果物は神の恵み、桜桃の味を忘れたかと言うが桑の実を桜桃に置き換える必然性、ましてタイトルにする意味は何故だろう、桑の実では一般的に味が伝わらないとの配慮なのか、だとすると作風と合わない気もする。引受人の設定が博物館の剥製職人、ウズラの標本を作っているらしい、なるほど、死体処理には打って付けだ、病気の子供の治療費とか主人公と打って変わって動機説明は妙に饒舌。
男は念願(?)かなって穴に入って眠るところまでで画面は暗転、突然メイキング映像に変わる・・。結末まで観客に委ねるとは、ほぼ丸投げ状態。
冒頭の職にあぶれた街中の若者なら二つ返事で請け負ったろうになぜ埋葬人に拘るのか、実は妙な設定を借りて、登場人物に正論を語らせることで狂信的ととられているイスラム教徒の汚名を雪ぎたかったのかもしれないと邪推したくなる。
内容を知っていたら敬遠していたのだが「初恋が来た道」のチャン・イーモウ監督が影響を受けたイラン映画と言っていたので鑑賞、確かに哲学的テーマ風、撮り方も独特、音楽も無いミニマリズム、玄人受けするのは分かるが本音としては作家性が強すぎてどうにも意味不明、観るに堪えなかった。