「桜桃の味を思い出したか、食べてみたくなったか・・・」桜桃の味 kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)
桜桃の味を思い出したか、食べてみたくなったか・・・
冒頭はある意味ドキュメンタリータッチで町を歩く人に声をかけまくるオッサン。後から考えると、ここだけは完全にアポなし撮影だったのかもしれないなぁ。
最初に助手席に乗ってしまったのは兵舎へと急ぐ若い兵士。まだ兵隊になって2ヵ月で、給料だけじゃやっていけないともらしたりする。仕事してみないか?とオッサンは訊く。が、兵士は内容は?と訊き返すばかり。もしかしたら男色で、変態行為を要求されるんじゃないかとビビッているかのようだった。
二人目はアフガニスタンからやってきた神学生。自殺ほう助を頼むが、もちろん宗教上の理由で拒否するのだった。ただ、まだまだ学生であるため、オッサンの自殺を止めるまでには至らないというもどかしさ。オッサンも負けじと神から授かった命を返すだけだと説得するも、やはり交渉決裂。
いつの間にか三人目となるバゲリ爺さんが助手席に乗っていた。「わしも昔は自殺しようとしたことがあっての・・・」「桑の実を食べてるうちに自殺する気が失せてしまったのじゃよ」などと、人生の先輩らしく止め方も柔らかい。仕事は請け負ったものの、オッサンがすでに自殺する気がなくなったんだと確信したに違いない。彼は車を降り、職場である自然史博物館の中へと消えていった。
深夜、わざわざタクシーで自殺場所に向かったオッサン。しかし、どうなったかは観客に委ねられるかのように、突如何かの撮影隊と兵隊さんたちがピクニック。これで本当に自殺したんだと思う人はいないだろうけど、ストーリーの突き放し方が尋常じゃない。心地よいとも思えないし、やはり甘酸っぱさが残る作品と言えるのでしょうか。