「見所は早着替え」黄金の七人 つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
見所は早着替え
映画史的な意味合いや、雰囲気の比較においてよく名前が出るのが本作「黄金の七人」だ。
今観て、特別に面白いとかそんなことはないのだけれど、ただ凄いとは思う。なぜならばこの作品の制作が65年だからだ。
65年に公開されたほかの作品は「赤ひげ」「サウンド・オブ・ミュージック」などがある。なんかもう方向性とか映画の作り方自体が本作は全く違うのだ。
最近は聞かなくなったけれど、2010年代頃までは「マトリックス」以前と以後などと言われた。要はそれだけ革命的な分岐となる作品だということ。本作「黄金の七人」もまた映画というもの自体を分岐させた革命だったといえるだろう。それだけ、ある意味でぶっ飛んだ、非常識ともいえるほどの作品だった。
物語が始まるともうすでに銀行強盗を始めている。近年のアクション映画などでよくあるオープンニングミッションなのかと思いきや、これが本編で、これしかない。前置きとか人物紹介とか設定みたいなものは説明なし(作中に多少はある)。
全く分からないまま見せられて、それでもなんか面白い。
そして気付く。この作品はロッサナ・ポデスタ演じるジョルジャの衣装チェンジを楽しむものなのだと。
もはやギャグなのではというくらいの早着替え。ワンカットごとに違う衣装。カンヌ国際映画祭のドレスコードにも引っかかりますよというほどのセクシー全振り。
これが65年とは恐れ入った。逆に近年じゃ一部の人が騒いでやれないレベル。
この作品を観ると近年の、整合性がどうとか、ストーリーがどうとか、映画にとって本来どうでもいいことに尺を使うバカらしさを強く感じてしまう(これについては観る側の問題が大きいけれど)。
とりあえず、一映画ファンとして観といて良かったと思えた。