「無垢な感性を描く宝物」エンジェル・アット・マイ・テーブル sugar breadさんの映画レビュー(感想・評価)
無垢な感性を描く宝物
冒頭の一本道に立つ少女の髪の赤と大地の緑のコントラスト。そして少女の表情。まず観客の心を掴んでいきます。
始終おどおどしているジャネット。もじゃもじゃの赤毛で内気で人見知り。過度の感受性を持つ。でも彼女は書く事で、そんな自分を克服していきます。姉に強要された詩の言葉選びは結局変えなかった。ここは譲れない。教師ではなく作家を選んだのは必然でした。
ジャネット・フレイムの自伝の映画化ですが、感動を誘うような構成ではなく、脈絡はあまり気にせず小さなエピソードを積み重ねていく手法がむしろ良かったです。
第二部は当時の精神疾患への無理解が生む厳しいパートでしたが、もっと極端な描写になりそうなところを、敢えて抑制していたと思います。実は誤診だったという事実もさらっと台詞で説明しただけでした。
第三部 スペインでの遊泳時の至福の表情と、彼から帰国を聞かされた時の表情は、普段のおどおどとは少し違う初めて見せる悲しみでした。
父親の死後、靴に足を通したり、外でひとりで遺品を焼いているシーン。情感があって良かったです。
ジェーン・カンピオン監督のこの後の活躍は目覚ましいのですが、初期の本作はピュアな感性が光る宝物のようです。
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