「映画史に残るアイコン的作品と聞いたので見たのだが、、、」エデンの東 lbn Mu'mininさんの映画レビュー(感想・評価)
映画史に残るアイコン的作品と聞いたので見たのだが、、、
主人公のキャルは確かに母の不在、旧来の価値観に囚われている父、そしてその父に従順な兄、アロンとの対比され余り喜ばしく無い評価を与えられたことは同情すべきである。だが父と兄は両者とも悪意はなく、また主人公を見捨てず出来るだけ精一杯愛を与えていた。
主人公は多少のシンパシーを感じたからか、兄のフィアンセに対し愛情表現を行う、これは兄に対する裏切り以外の何物でもない。いやもしかするとこれは兄に対する''理由なき反抗''か?
キャルは兄に対して常に劣等感を抱き、兄よりも良い評価を得たかったのだろう。父を喜ばせるために彼は自ら稼いだお金を父の事業失敗の補填に当ててもらうため父の誕生日にプレゼントしようとした。
しかし父が喜んだのは兄、アロンの婚約で、キャルの稼いだお金の受け取りは拒否した。
視聴者はキャルは用意した贈り物を無下にされた哀れな主人公のように見えるかもしれないが、父親は徴兵委員であり顔馴染みである近所の人の子供を戦地に送り、死なせている一方でキャルは戦争によって得た儲けで金を作ったのだ。
果たして父親の立場に立って、素直にそのお金を受け取れるだろうか?
主人公に焦点が当てられ過ぎる余り、そこに対する指摘が少な過ぎるように思える。
キャルは父の評価に対する反発から復讐をする。まず今までの自分の素行やフィアンセに行った不必要な接触に対し不満を述べたアロンに少し前に見つけた母と引き合わせる。
これはアロンの神聖視していた母親のイメージの破壊行為であり、彼の倫理観を揺らがせるものであった。父はそうなるのが分かっていたので、母親が見つかったことを知らされてもキャルにアロンには伝えないよう念を押したのだ。また母もキャル以外の家族に自分の存在が知られることを望んでいなかった、つまり彼は同時に三人を裏切ったというわけである。この復讐は見事に目的以上の効果を発揮する。まず兄のアロンは半狂乱となりそのまま戦地に恋人を置いて向かう、そして父は大事な息子の余りの変わりようにショックを受け脳卒中となり半身不随となる。
さらに母親はかつて家を出て行ったとはいえ、キャルの仕事に必要な多額の資金を貸すなど彼の理解者でもあった。しかしキャルは恩を返すことはなかった、彼は母が知られたくなかった秘密をアロンに見せつけ失望させた。
これら一連の行為は一時の悪意で済まされるものでも無いし、更にその許しを得ようとするのは余りにも傲慢ではないか?
家族を狂わせた張本人であるキャルは死期の近い父から寛大な許しを得た後、兄のフィアンセと結ばれる。多くの者を感動させた物語の実態はこうである、カインとアベルよりも残酷な話かもしれない。
映画公開当時、今まで押し付けられていた価値観に対し多くの若者が反発していたのは分かる、だが旧来の価値観の持つ善意まで殺す必要はあったのか?
またこの作品の評価を高めているのがキャルを演じているジェームズ・ディーンの存在だろう、この若くで死んだ俳優の出演した数少ない作品の一つ、それだけで付加価値はつく。
最後にこの作品は星二つとはしたが、B級映画と同ランクの扱いをしてるわけではない。やはり名作と言われるだけあって、どうなるのか、どう対処するのか一人の人生の一部を垣間見る気持ちで見れた。ただその行動が余りにも評価できるものでは無かったのだ。