美しき冒険旅行のレビュー・感想・評価
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【”ウォーク・アバウト”オーストラリアに住むイギリス人少女と幼き弟が砂漠で彷徨うも、アボリジニの心優しき少年と出会い共に旅し絆を作る。自然と文化や、人種を超えた少年少女の淡い恋を描いた作品。】
■冒頭、イギリス人少女と幼き弟は父とハイキングに来るも、父は心中を図るが如く二人に銃を発砲し、最後は自殺し、車は炎上する。
オーストラリアの砂漠に取り残された二人は、彷徨い歩く中、アボリジニの心優しき少年と出会い、彼らは共に旅をするのである。
◆感想
・アボリジニの少年の長けたサバイバルスキル。彼は野生動物を自ら仕留め、焼いてイギリス人姉弟を分ける。
更に、水場の位置も教えたり、日焼けした幼き男の子に、植物で調合した薬を塗ってあげるのである。
ー それと対比されるように描かれる、白人たちがライフルで野生動物たちを撃ち殺す姿も描かれている。-
・少女は少年が狩に行っている時に、一人全裸で川の中を魚の様に泳ぎ回る。
ー 美しい、シーンである。-
・彼らは、家を見つけアボリジニの少年は”一緒に住もう。”と少女に語り掛けるが・・。
ー 少年の夜、白いペインティングをして躍る姿は、私は勝手に求愛行為だと思った。-
・少年は、幼き弟に文明に繋がる道も教えている。
<ラスト、大人になった少女はフィアンセと思われる白人男性から優しく話しかけられるが、彼女の中にはアボリジニの少年と幼き弟と川遊びをしている風景を思い出しているのである。
今作は、人種や言葉が違っても絆は出来る事や、アボリジニの少年が少女に抱いた淡い恋と哀しき別れをニコラス・ローグ監督が、鮮やかに写し出した作品である。>
奇跡のような映画だと心から思う
なんだろう、不思議な魅力に溢れており
あっという間に終わってしまう
そして何か分からない感動のようなものが残る
良い映画に出会えた幸せの瞬間だ
奇跡のような映画だと心から思う
繰り返し鳴り写るラジオは何の記号だろう?
チューニングがずれた時、我々は心中しようとした父のようになる文明社会そのものの象徴なのだろう
ラストシーンの抱き合って頬にキスを交わす男女は10年後の姉弟の姿
そこにオーバーラップされる、美しき冒険旅行の記憶
二人の心の深奥に刻み込まれている様が美しく表現されている
その記憶は姉弟、そしてアポリジニの彼の三人ともが裸で水浴びして泳いだ記憶だ
そこに青年になった弟のナレーションが被さって終る
その裸での水浴びのシーンに本作のテーマが凝縮されている
このシーンを観るために、その美しさを理解出来るようになるために、それまでの100分は存在していた
それぞれのWALKABOUT
シドニーの街並みを足早に行き交う都会人。学校で発声練習をする女子生徒たち。裕福そうだが異様に無機質な家族。バックでビヨーンビヨーンと絶え間なく響く、アボリジニの民族管楽器ディジュリドゥの不気味な音。そして、カメラが茶色いレンガの壁をゆっくり移動すると、一瞬にしてオーストラリアの砂漠へとつながる。都会と自然を対比させながら、これから物語が砂漠の中で紡がれていくことを示唆する、シュールで不穏な幕開け。何だろう、この意味深で不協和音に満ちたオープニングは…。
父親と少女とその弟の3人で砂漠にドライブに来るも、父親は突然2人の子供めがけてライフルを発砲し、ガソリンで車に火を点けて自殺。少女と弟は、広大な砂漠の大地に取り残され、あてどなくさまよい歩くことに。ある日、少女と弟は一人のアボリジニの青年と出くわす。その青年は、砂漠の中を一人で生き抜く、成人になるための儀式「WALKABOUT 」の途中だった。しなやかな動きで動物たちを捕らえ、殺し、肉を割き、食料にしていくアボリジニ青年のたくましい姿に、文明人である少女はしばし見とれる。だがある日、空き家を見つけて3人の仮の住まいとした矢先、アボリジニ青年が突然、少女の前で求愛のダンスを披露する。カッと目を見開いて少女を見据え、真っ黒な体にスケルトンの模様をペイントして、少女に愛をアピールし続ける青年。夜になってもずっと…。バックに流れるディジュリドゥの不気味なサウンドも相まって、釘付けになるシークエンスだ。そして翌日…。
欧米人姉弟とアボリジニ青年の、それぞれのWALKABOUT。寡黙な作品ではあるが、この作品が水際立っているのは、自然と文明との対比に留まらず、異文化コミュニケーションの難しさや、生きとし生けるものの命を頂くということ、自立すること、そして何よりも、たくましく自然を生きる猛者も、我々と同じように恋に落ち、繊細な感情に打ちひしがれるのだということを、安直な言葉や説明なしに、映像と音のみで実に雄弁に物語っている点である。ジェニー・アガター扮する少女が、渓谷で生まれたままの姿で泳ぐシーンは、残酷なサバイバルの旅の中で、一服のオアシスとしては奇跡的に美しく、心洗われる瞬間だ。
なお、この作品はかなり前に一度観たきりで、それぞれのシーンが強烈に心に焼き付いたものの、再び観たいと思いつつ、その機会を逸していた。そんな矢先、日頃信頼し、フォローさせていただいている方がオールタイム・ベストの一本として大切にしていることを知ったのをきっかけに、本当に久々のDVD観賞となった。この作品との再会の機会を与えてくれたその方に、この場を借りて御礼申し上げます。
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