劇場公開日 1996年5月11日

「山に拘るウェールズ人の誇りをユーモア豊かに描いたイギリス映画の佳作」ウェールズの山 Gustav (グスタフ)さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0山に拘るウェールズ人の誇りをユーモア豊かに描いたイギリス映画の佳作

2020年4月18日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

305メートル以上なければ山ではない、たったこの一つの事柄でストーリーが出来、役者が揃い物語を語り、音楽が奏でられ、映画が完成する。現在から1917年に遡り、お爺ちゃんが孫に語り掛ける口調が、映画のテンポと音楽のリズムに見事に一致して、心地良い流れのある良心作。イングランド人とウェールズ人の民族対立を基調に、イギリス映画の上質なコメディセンスで登場人物たちが人間味豊かに描かれている。また、ジョン・フォード監督の名画「わが谷は緑なりき」を彷彿とさせるウェールズ魂があって、個人的には大好きな作品。ヒュー・グラント演じる嫌味のない二枚目青年が、そのウェールズ魂に自ずと共鳴していくところがいい。そして、撮影が素晴らしい。例えば、ある青年が丘の麓にひとり取り残されて、村人たちが数珠つなぎで登っていく山肌を見上げていくカットのティルトアップ。その視線の先の視界を見て意を決した青年が、土を運び登っていく心境表現と、その自然の風景の美しさ。言葉では言い表せない映画的な表現が感動を呼ぶ。欲を言えば、夜明け前の山頂で主人公と抱き合う婚約者の帽子が風に吹かれて飛んでいくシーンはあるのだが、空と土と丘と人と雨の世界に、もっとまた違った風の描写が欲しかった。
ラスト、登場人物の子孫たちが頂上で手招きしていると、山の景色が現在に変わり、再び村人たちが土を運んでくる。測り直したら303メートルという、ユーモアに富んだオチがまたこの映画の面白さであり、語りの優しさである。そして、最後までウェールズ魂を感じさせてくれる。

Gustav