「教訓と共に感覚的に焼き付く」インテリア 雨音さんの映画レビュー(感想・評価)
教訓と共に感覚的に焼き付く
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随分前に一度観て以来、好きとか嫌いとか言うより、とにかく忘れられない映画。
白基調の洗練されたインテリアや、波の音、陶器の割れる音、イヴの上品で美しい立ち姿、ジョーイの無表情な陰気臭い白い顔、外部から突然持ち込まれる「赤」という色の鮮烈さなど、感覚に焼き付くからだと思う。
ストーリーは人間のスキを突きつけられたような複雑な印象だった。
イヴは、どこがいけなかったのか。自分の理想とするかたちにこだわりすぎるあまり、柔軟性や愛情が欠如していたということらしいが、寂しいと涙を流す姿には、罪がなさそうな単純さと、かわいささえ感じて、なんだか気の毒になった。
アーサーが、もっと早くからイヴとよい関係を作るため、何かできたのではないか。晩年になってからの拒否は、ひどいのではないか?
娘たちにしても、成長する家庭でイヴともっと本音でやり合っていれば、もう少し違う家庭になっていたのではないか。
このひとたちは結局イヴには引きづられてきただけ…。
それでもジョーイは、母のことを他人事として割り切れなかったのだと思う。でも遅かった。
悪循環のループに陥ってしまうと簡単には仕切り直せない。前へ向かっているようにみえて実は下に向かってしまっている。
上昇志向、理想、完璧主義…そういったものの落とし穴を見せつけられた感。
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