イル・ポスティーノのレビュー・感想・評価
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「詩は必要としている人のもの」なのか?
マリオがパブロの詩を使ってベアトリーチェを口説いたのが最後まで引っかかってしまった。「詩は必要としている人のもの」というのがマリオの考えだ。なるほど、そういう考えもあるかもしれない。共産主義的な言い方をするなら、詩という財産を共有する、ということかな。
それでもやっぱりマリオの考えには賛成できない。創作物というのは作り手の個人性が宿るもので、それを自分のものかのように使うのは作り手に対して敬意が無さすぎる。どれだけ稚拙な表現になっても、マリオは自分の感性を懸命に働かせ、必死に言葉を生み出してベアトリーチェを口説くべきだった。人の言葉を借りて思いを寄せる人を口説いても、嬉しいとは思えない。
ただ、最後の最後でマリオは詩人になったと思う。島の海や風、息子の心音を録音するという発想に感動した。彼の感じる島の美しさを、自分の声とともに残すという姿勢は正真正銘詩人。実際に島の風景や音、島民たちは様々な美しさを備えていたと思う。
悲しいラストだったが、海岸を歩くパブロの姿に深い余韻を感じる。
余計な情報が作品性を損なう
主演の、配達人役のマッシモ・トロイージはこれが遺作になったということを聞き、感動のハードルが上がってしまった。
知らずに見ていたら気にならないレベルだったと思いますが、とにかくしんどそうに動くんですよ。マッシモ・トロイージが。
恋人役の女優さんも、無駄にエロチックで、感動の方向性とは、やや違った方向に作品の評価は行ってしまったと思いました。
ことさらに「泣ける」を強調されると、こういう結果になりがちですね。
2017.5.4
タイトルなし
期待していたがそれほど感動せず。主人公にそれほど魅力を感じなかった。もっと若い人が演じれば違ったかもしれない。偉大な詩人を通して青年?が成長していくストーリー。ラストには亡くなっている。
美しいイタリアの島
大昔に観てなんとなくよかった映画、を再確認するべく再鑑賞。
良かった。
美しいイタリアの島に、突如降り立った偉大なる詩人ドン・パブロ。
仕事もなくパッとしないマリオの人生を、詩人が大きく変えることとなる。
詩人がチリに帰国して数年、残念ながら2人の再会は叶わなかったけれども、詩人は島を、マリオを、忘れてはおらず、マリオもそうと信じてた。2人の間にあった絆の深さと、素朴で美しい島の風景がじんわり絡み、心に残ります。
普段、詩にはあまり触れることもなかったけれども、ドン・パブロのわかりやすいレクチャーのおかげで、ちょっと興味が湧いてきました。なんか読んでみよう。
イタリア映画のあたたかさと残酷さ
まさにイタリア映画。雰囲気、景色、なんとも言えないあたたかさと残酷さ。
純粋なマリオが愛おしいキャラクター。ネルーダに影響を受けつつ、彼が去ったあとも彼に心酔するというわけではなく、忘れられたように思えても彼に感謝し続ける姿が良かった。
波の音や教会の鐘、夜空、お腹の子供の音など、島のきれいなものを録音するのが素敵だった。
涙が止まらない・・・
まずは地中海に面した島の風光明媚なところに心奪われる。漁業メインの小島。水道すら引いてなく、月1回くる給水船が頼り。そんな静かな村だから若者も少ないのだろうか・・・
映画館のニュースで見たパブロ・ネルーダ。彼が女性に人気だということも気になるマリオは憧れてしまう。パブロも共産党員、郵便局長も共産党員、いつしかマリオも共産党を名乗っているほどだけど、政治色はほとんどない。
一軒だけの郵便配達。週に1回映画が観れる程度の給料じゃ大変だろうに・・・と思いつつも、毎日配達し、詩について学んだことはかけがいのない財産。隠喩という言葉がそのままコミカルに使われているところも面白い。
島で一番美しいのは・・・ベアトリーチェ・ルッソ!君の笑顔は蝶のように広がる。印象に残る台詞ば多いけど、映画全体に渡ってそのまま詩だったようにも感じてしまう。
マリオとベアトリーチェの結婚後、島を去ったパブロ。どの記事を読んでも島の人のことに触れてない。寂しい思いもあったけど、第二の故郷のように感じていたことは間違いないのだろう。
残された録音されたマリオの詩。そして、自然をそのまま音で表現しようと集めた苦労も伝わってくる・・・個人的な思い出もあるし、なぜかこのエピソードが一番好きだ。
エンドロールに亡きマッシモに捧ぐ・・・などと書かれると涙が止まらなくなる。病気に蝕まれながらも製作にこぎつけたという執念はすごい。
いつ見ても名作!!純真と友情と愛は永遠です
大学生の時に劇場でみて、すっかりお気に入りに。DVDも買って、最近思い立ってまた見てみました。
本当にいつ見ても名作です。「
人は良いけど、無教養で怠惰な生活を送るマリオが郵便配達の仕事に就き、パブロネルーダへの配達を始めることが物語の始まりです。
マリオはネルーダと交流を深め、詩に触れることで豊かな感受性を持つようになり、成長を遂げていきます。
ネルーダが浜辺で隠喩について語るシーン、郵便物を届けに島を自転車でこいでいくシーン、とにかくすべてが島の美しさと映像の美しさに彩られていて、不思議な詩的な感覚すら覚える映像もとてもよかったです。
マリオはネルーダの詩に見せられつつ、島のレストランのウェイトレスのベアトリーチェに恋に落ちながらも、ベアトリーチェに愛を伝える言葉をしらない、ネルーダに愛を伝える詩を書いてほしいとせがむのですが、このだめっぷりも本当によいですね。
さらには、ネルーダが妻に送った愛の詩をベアトリーチェにささげてしまうほどのだめっぷり。
ネルーダが人の書いた詩をあたかも自分のもののように使うなんて…的な非難をマリオに浴びせますが、マリオは「詩は書いた人間のものではなく、必要としている人間のものだ」と言い返し、ネルーダは閉口。このシーンを最初に見たときは、「本当にだめな人だなぁ…」とがっかりしましたが、クライマックスへの伏線だったことも、とてもすばらしいな…と。
やがて、別れがきてネルーダは母国に帰ります。
ここでも、マリオはネルーダが自分との友情だったりを何か母国で話すのでは…それがニュースとして聞こえてくるのでは…手紙とかくるのでは…と期待を寄せつつ、きたのは「荷物をおくってくれ」という手紙。マリオはここでがっかりして、ネルーダとの友情について考えてしまいます。本当に、子供みたいに純粋で絵に描いたようなだめっぷりが本当に憎めなくて好きです。
ネルーダの家にいったマリオはネルーダの残したテープを聞くや否や、島の素敵な場所の音を集め、それを歌った詩を録音し始めます。
自分こそネルーダに感謝をしなくてはならないことに気づいた瞬間でしょうね。純粋だからこそ素敵です。
最後は労働者の集会で命を落とすわけですが、ここでマリオはひとつの詩を読むはずでした。
「詩は書いた人間のものではなく、必要としている人間のものだ」ということがここにつながっていたのでしょう。
ネルーダとの出会いによって、成長し、家庭を持つことができただけでなく、言葉を必要としている人のために詩を読むまでにいたったマリオがここで命を落とすというのが、なんとも悲しい終わりだなぁと何回見てもエンドロールでないてしまいます…
純粋な心と素敵な島の風景、詩的な映像、どれをとっても名作で、本当に最近こういう話ってでてこないよなぁ…と感じてしまいます。
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