「90年代らしい、映画らしい映画」依頼人(1994) keebirdzさんの映画レビュー(感想・評価)
90年代らしい、映画らしい映画
私は90年代に社会人の根が生えた者なので、94年のこの映画の感じは何もかも懐かしい。まるで昔撮ったHi 8のビデオを実家で発掘して見たような気分。
まあ中身的には、恐ろしい悪役がいかにも軽薄でバカだとか、前年の「逃亡者」で似たような、でもキレキレの演出・演技で一躍名を馳せたトミー・リー・ジョーンズの使われ方がなんか中途半端だとか言える文句はありますが、それもまとまりと推進力あるストーリーを展開する上の必要な下ごしらえのようなもの。主演の女性弁護士にあまり感情豊かに語らせすぎず、観る側の感覚と当時までの世相雰囲気で立場や苦境、思いを伝えるのもいかにも「劇場映画」らしい作りで素晴らしい。21世紀の今日でも本作のネタは映像化に使えそうですが、それは恐らく配信のミニドラマシリーズか独占作品となってもっと小さく感情的なドラマか逆にDEIを配慮して妙に薄くて社会網羅的なわけ分からん映画になってしまうのでは(と言いつつ本作はアマゾン視聴、だって名画座ないんだもの)。
とまれ、わずかに古臭いテンポを感じさせるものの全体としてイイ出来の映画です。あとやはり、アメリカの子役の層の深さと安定感はすごいですね。
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