いぬ(1963)

劇場公開日:1963年11月16日

解説

新鋭推理作家ピエール・ルズーの同名の小説からわが国には初めてながら、名匠のジャン・ピエール・メルヴィルが脚色、演出もした暗黒もの。撮影は、ニコラ・エイエ、音楽はポール・ミスラキが担当した。出演者は「大盗賊」のジャン・ポール・ベルモンド。他にセルジュ・レジアニ、ジャン・ドザイ、ミシェル・ピッコリ、新人女優のフェビエンヌ・ダリ、モニーク・エネシーら。

1963年製作/フランス
原題または英題:Le Doulos
配給:東和
劇場公開日:1963年11月16日

あらすじ

モーリス(セルジュ・レジアニ)は出所以来四月、服役中に妻を失ったが今は新しい女テレーズ(モニーク・エネシー)もでき、次の仕事決行の日も近づいたある日、ジルベール(ルネ・ルフェーヴル)を訪ね、妻を殺した男と確信して射殺し、彼の宝石店強盗の宝石類を奪い、近くの空地にそれを埋めた。仕事の日、親友のシリアン(ジャン・ポール・ベルモンド)の用意してくれた穿孔器を持ってレミーと二人である街の大邸宅に押入った。だが、警官隊の包囲作戦をうけ、レミーは殺され、彼も一弾をうけた。シリアンがテレーズから暴力で仕事先を聞きだし密告したのだ。モーリスはシリアンがいぬ(情報屋)だという噂を信じざるを得なかった。そしてテレーズが崖から自動車で墜落死をとげたと知り、自分を狙う黒い手のあることに愕然とした。彼はクラン警部(ジャン・ドザイ)に逮捕され、シリアンの裏切りを信じ、復讐を誓って入獄した。一方シリアンは、例の広場から宝石と札束を掘り出し、ジルベールの仲間ヌテシオ(ミシェル・ピッコリ)の経営するナイトクラブへ。そこで、かつて彼と関係がありいまはヌテシオの情婦になったフェビアンヌ(フェビエンヌ・ダリ)とヨリを戻した。彼は女にジルベール殺しはヌテシオだと決めつけた。確かに、犯行直後に車で乗りつけていたのは彼女とジルベール一味だった。そしてヌテシオとその部下アルマンを相打ちの形にし、宝石類を金庫に入れ、分け前のもつれで殺しあったようにみせかけた。いぬは何とテレーズだった。シリアンはテレーズから強盗現場を聞き出し倒れていたモーリスを救ったのだった。さらにテレーズを殺し、ヌテシオらにモーリスの罪を着せるための細工であった。モーリスは彼の友情を知り、自分を恥じた。獄中で憎悪のあまり同房の男にシリアンの家で彼を殺すことを頼んでいた。知らずにシリアンは帰ってゆく。知らせるためにモーリスは雨のハイウェイをシリアンの彼を追い、迂闊にも追い越し、間違って自分が射たれた。一足遅れて帰ってきたシリアンも、相打ちで空しく倒れた。

全文を読む(ネタバレを含む場合あり)

スタッフ・キャスト

全てのスタッフ・キャストを見る

関連ニュース

関連ニュースをもっと読む

映画レビュー

4.0 つ・・い・・たて

2023年10月18日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

興奮

難しい

とにかくジャン=ポール・ベルモンドの存在する立ち位置に確信すら持てないまま物語が進んで行き穿った見方をしているから全ての事情や辻褄を合わせた謎が解き明かされる場面でも疑いや混乱は避けられない、登場人物が入り乱れてセリフ上で名前が飛び交い整理出来ない現状がノイズになりながら、映像に映し出された全てを素直に受け入れて鑑賞出来たなら複雑な物語と感じる必要も無いのだが!?

煽ったようなワザとらしい演出は皆無で至ってシンプルな物語構成に惹きつけられながら勝手に惑わされて、メルヴィルが描くハードボイルドな雰囲気を醸し出した、これぞフィルムノワールと納得の一本であるのは間違いない。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
万年 東一

5.0 ひとことです言えば大人の映画です

2022年9月27日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

1963年公開、フランスの白黒映画
フイルムノワールの傑作として名高い作品です
監督はジャン=ピエール・メルヴィル
本作の次の次の作品がフイルムノワールの金字塔「サムライ」になります

フランス映画を観たという満足感があります
恋愛ものの良い映画が山ほどありますが、ノアールものもまたフランス映画の醍醐味でしょう

冒頭、タイトルロールの間、鉄道ガード下の半地下の歩道をトレンチコートに帽子の男がポケットに手を突っ込んでただ歩いています
もうそれだけで心を鷲掴みにされます
映像のスタイリッシュさは半端ありません

映画の最初に帽子とは隠語で警察のいぬのことだとテロップがでます

そしてラストで撃たれて倒れた人物が被っていた帽子が床に転がるシーンで映画は終わるのです

音楽がまたお洒落
クールジャズが気づくといつの間にか薄く低く流れています
これが全編に渡って本作を支配しているムードです
拳銃を撃ち、女を殴り、走るシーンもあります
怒鳴るシーンもあります
だけども大変に抑制されているのです
一言で言えば大人の映画です

なんだか池波正太郎の「鬼平犯科帳」を思い出しました
彼は映画好きの作家で有名で、「フランス映画旅行」という著作もあります
代表作の「鬼平犯科帳」はもちろん時代劇ですが、本作と似た雰囲気が濃厚にあるのです
もしかしたら本作のようなフランス映画のノワールものが下敷きになっているのかもしれません
「鬼平犯科帳」は本作の4年後、1967年から連載がスタートしているのです

そして1964年の日本のフイルムノワールの傑作で篠田正浩監督の白黒映画「乾いた花」も思い出しました
その作品もまた本作から刺激を受けたように思います

シリアンのようにスコッチを飲みたくなりました
もちろんクールジャズの流れる薄暗いバーでゆっくりと

コメントする (0件)
共感した! 0件)
あき240

5.0 美しすぎるフィルム・ノワール

2020年11月2日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

泣ける

悲しい

知的

ジャン=ポール・べルモンド傑作選が開催中ということで、ずっと前にDVDを買って観るのを忘れていた今作を思い出した。
ということでべルモンド傑作選番外編ということで「いぬ」を鑑賞

ノワールを撮らせたら右に出るものはいないフランスの巨匠メルヴィル監督の割りと初期の作品。後期の代表作である「サムライ」「仁義」、遺作である「リスボン特急」ではアラン・ドロンを起用していたが、その前にべルモンドとも今作と「モラン神父」という二つの映画を撮っている。「モラン神父」も傑作だったが今作も凄い。これぞフィルム・ノワールのお手本だ
美しいモノクロの映像で雰囲気抜群
緻密なプロット
闇に生きる男たちの裏切りと友情
切なすぎるラスト
そして何よりべルモンド演じるシリアンの生きざまがカッコよすぎる。

フィルム・ノワールはやはり寒々しい白黒が至高
そして何より、突然やってくるカタルシスが素晴らしい。真っ当に生きていなくては絶対に天罰が下るということを観ている者に教えてくれる。しかし黒い世界でしか生きていけない不器用な男たちの哀愁が同情を誘うのだ。映画のジャンルとしては最高だ!

コメントする (0件)
共感した! 1件)
柴左近

3.0 フィルム・ノワール

2019年2月5日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル
ネタバレ! クリックして本文を読む
コメントする (0件)
共感した! 0件)
kossy