「人物描写は良いけど、少し安易なストーリー」いつも心に太陽を 根岸 圭一さんの映画レビュー(感想・評価)
人物描写は良いけど、少し安易なストーリー
シドニー・ポワチエ演じるサッカレーは、恵まれない環境で育ちながらもそこから努力して技能と教養を身につけた人だ。だから、同じような環境にいる生徒たちの親近感を得て、それが生徒たちに慕われる一つの要因になったのだろう。日本よりももっと格差社会の激しいはず(よく知らないが)のイギリスでは、彼のような存在は励みになるのだと思う。
また、サッカレーは一貫して生徒たちを大人として対等に扱うという言動を示している。そこは筋が通っていてよかった。相手がどう考えているかって結構伝わるものだ。だから、その真心が生徒たちにも伝わったのだと思う。そういう意味で、人物描写はよくできている映画だった。
だが、ストーリーは少し安易な印象。サックレーが毅然とした態度を取るようになったら割と簡単に従順になる生徒たちを見ていると、そもそもさして荒れた学校でもないように見える。博物館に連れて行った程度で慕われ始めるのも違和感がある。体育教師に暴力を振るった生徒に対して「大人はそんなことしない」の一点張りで、生徒の感情を考慮していない。大人として扱う=感情を考慮しないとはならないはずだ。しかもそのわだかまりを、最終的にボクシングで決着をつけてしまうのも安易だ。その割に最後の歌とダンスシーンが長くて、感動的な演出で押し切っているように思える。
以上の理由から、良い映画といえば良い映画だけど、物足りない内容だった。
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