「ナポリの観光地を巡る愛の彷徨」イタリア旅行 sugar breadさんの映画レビュー(感想・評価)
ナポリの観光地を巡る愛の彷徨
互いに心が離れてしまった夫婦がイタリアを旅するだけの話なのだが、なぜか引き込まれてしまう。
イタリアのモノクロ映画独特の硬い画質。アントニオーニ作品でも感じた突き放すような冷たい空気感。
ナポリの観光案内さながらにバーグマン扮するキャサリンが名所を回る。博物館の古代彫刻に圧倒され、洞窟観光ではガイドに隠れて悪態をついたりする。カタコンベでは頭蓋骨の山に気分を乱され、夫への冷めた愛情や嫉妬、かつて好きだった亡き詩人の友人への思慕など複雑な心模様を絡めて描いていく。
夫の方はいけすかない人物で、カプリ島で浮気や買春を試みるが不発に終わる。「友達が死んだの」と言う娼婦のいきなりの台詞には、さすがにドン引きしてしまう。
そんな冷め切った夫婦がポンペイ観光の後、お祭りの列に巻き込まれて愛を取り戻すことになるのだが、これがあまりに唐突過ぎる。それともロッセリーニのこの力業を「奇跡」と呼ぶべきなのだろうか。やっぱり最後まで引き込まれてしまった。
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