「世界の監督たちに影響を与えたイタリア映画」イタリア旅行 和田隆さんの映画レビュー(感想・評価)
世界の監督たちに影響を与えたイタリア映画
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製作・公開当時、本国のイタリアでは批評家から「イタリアのネオリアリズモから後退した」と評価を得られなかったロベルト・ロッセリーニ監督の「イタリア旅行」(1953)ですが、その後の世界の監督に影響を与えた映画史の中でひとつの原点とも言える映画です。
当時、フランス・パリでは成功を収め、映画批評誌「カイエ・デュ・シネマ」の初代編集長アンドレ・バザンや若い批評家たちはこの作品に熱狂しました。若い批評家たちとは、1950年代末に始まったフランスにおける映画運動“ヌーヴェルヴァーグ”(新しい波)の中心的な映画監督となるジャン=リュック・ゴダールやフランソワ・トリュフォーらで、そのためロッセリーニは「フランスのヌーヴェルヴァーグの父」と呼ばれています。
主人公である倦怠期の夫婦を演じたのはイングリッド・バーグマンとジョージ・サンダースで、当時結婚していたロッセリーニ監督とバーグマンとの関係が反映されていると言われています。物語は淡々と進んでいくように見えますが、ロッセリーニ監督は二人に即興的な演技を求めたとされていて、バーグマンの美しくも繊細な演技が夫婦の微妙な心理を浮き彫りにしていきます。劇的な展開はありませんが、小さな出来事が積み重なっていくことで、夫婦の心に甦る変化を観客も一緒になって体験し、ラストにはなんとも言えないカタルシスを味わえる映画です。
ベルナルド・ベルトルッチやマーティン・スコセッシら多くの監督に影響を与えたと言われる映画なので、この作品から映画史的な系譜を辿って見ていくと、また新たな視点で映画を楽しむことができると思います。
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