イゴールの約束のレビュー・感想・評価
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【”少年は確かに不法移民の男の最期の願いを守った・・。”父の不法移民の受け入れを手伝っていた少年の心の葛藤と成長をドキュメンタリータッチで描く。不法移民問題にダルデンヌ兄弟が警鐘を鳴らした作品。】
ー 今作では真の悪人は描かれない。
不法移民の不正受け入れで金を稼ぐロジェ(オリヴィエ・グルメ)も、息子イゴールをこき使うが息子と住むための家を買うために汚れた仕事に手を染めているが、彼が息子を愛している事は、バーでドゥエットするシーンから伺える。
だが、それが逆にベルギーの貧困者が不法移民の不正受け入れをして金を稼ぐという負の連鎖を見る側に伝えるのである。
◆感想
・ダルデンヌ兄弟のこの作品では、音響効果などは一切使われない。それが、ドキュメンタリーを見るかのように、不法移民問題の根深さを伝える。
・不法移民のアミドゥは、不法移民摘発の際に、ロジェとイゴールが住むアパートの足場から落ちてしまう。止血しようとするイゴールの手を払いのけ、止血のベルトを外してしまうロジェ。
そして、イゴールはロジェの言いつけ通りにアミドゥを板の下に入れ埋めてしまう。
・アミドゥの妻アシタは突然いなくなった夫の身を気遣いながらも、赤ん坊の世話をする。良心の呵責があるイゴールも彼女の面倒を見てあげる。
赤ん坊が熱を出した時も、病院へ連れて行く。お金が足りないがアフリカ系の女性ロザリーがお金を出して上げる。
<窃盗すらも悪いことだと思わないような少年イゴールが、不法移民のアミドゥから遺言を託され、自分なりにそれを守り実行しようと奮闘する。
その過程で起こる、それまで父の言うがままに行動していた少年の心の変化、成長する姿が胸に響く作品。
今でも続く、不法移民問題にダルデンヌ兄弟が警鐘を鳴らした作品でもある。>
ドグマチック
いきなり老婦人が落とした財布をネコババするイゴール。父の手伝いをしていても、女の着替えを覗いたり、車の運転をしたりと、なかなか面白いキャラだ。父の不法な道徳観をそのまま受け継ぎ、ある意味天真爛漫に育ったイゴール。
死んだアミドゥは最期に「女房と息子を頼む」と言い残す。イゴールはしっかりと約束をかわしたことが、父親に追従してきた今までの自分との葛藤へとつながっていく。アミドゥの妻には彼が死んだとは告げられず、あちこちへと奔走するイゴール。徐々に彼の価値観が変化していく姿がなかなかいい。「正直に話そうよ」と父親に言い、争いになる。それでもアミドゥの妻にはなかなか告げられないもどかしさ。
シュールなエンディングが切なく、不条理な世の中を象徴しているようなシーン。妻の顔が見えないところがいい。全体的にドグマ映画のような雰囲気。
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