「うーん、深い。」怒りの日(1943) いなかひとさんの映画レビュー(感想・評価)
うーん、深い。
若い頃、この監督の「裁かれるジャンヌ」、「奇跡」を観て衝撃を受けた。再上映されると知って、まだ観ていない作品はこの機会を逃すと、当分ないだろうと思い鑑賞した。本当は「裁かれるジャンヌ」も観てもよかったのだが、鬱病の症状が表われ始め、精神的に不安定の状態では、ショックが大きいと断念した。まだ、観ていない方は、是非鑑賞することをお勧めする。無声映画だけど、訴える力は凄い。
この映画もいろいろ解釈できる映画で奥が深い。ベルイマン監督は、もろに影響を与えている。
牧師の後妻となった若い娘が、義理の息子を誘惑する物語だ。誘惑ではないと思う。恋したこともなく年老いた牧師に嫁いだものの、セックスレスで子供を産むことができない。おまけにうるさい姑がいる。この結婚にも訳ありの事情が絡んでいる。そんなところに、先妻の息子が帰省してきて、同年代の若い二人の間に恋が芽生える。夫や姑の目を盗んで逢瀬をするが、手をつないだりキスをするぐらいだ。セックスまではいっていない描きかただ。
中世ノルウェーの魔女裁判では、他人の死を願うだけで魔女とされ、火あぶりの刑になる。告発もあの人は魔女と訴えばいいみたいだ。あとは拷問による強制自白である。とんでも世界である。
私は北朝鮮のキムジョンウル総書記や今ウクライナに戦争を仕掛けているプーチン大統領など殺してやりたいと思っているので、即火あぶりだ。
恋に溺れて夫の死を願った通りの事が現実となり、葬式で姑から魔女として告発されて幕となる。
他の投稿では後妻を魔性の女と評している方もいる。が、私は違うと思う。彼女は自分の感情に正直なままだ。監督はその判断を観客に委ねるような描き方をしている。
しかし、この義理の息子の態度はどうだろう。繼母を守ることを言っておきながら、最後は告発側に寝返るのだから、牧師見習いのいい加減さに呆れる。
「怒りの日」は、神の審判がくだされる日みたいだ。イタリアの作曲家ヴェルディのレクイエムの「怒りの日」は演奏効果抜群で、テレビ番組でよく利用されている。