「大人を泣かせるこども映画」E.T. kazzさんの映画レビュー(感想・評価)
大人を泣かせるこども映画
午前10時の映画祭で観賞。
言わずと知れたスピルバーグ監督の代表作のひとつにして、SFファンタジーの名作。
母親以外の大人は、ほとんど顔が見えない。
「トムとジェリー」で人間の顔を出さず観る者の目線を猫・ネズミに合わせさせたのに似て、観客を主人公たち子供の主観に近づける。
子供たちから見ると、“鍵男”の方が異星人よりよほど不気味で危険に見えるのだ。
大筋は、可哀想な目にあっている動物を子供が大人達の手から救い出す冒険物語で、異星人だとか未知の生物だとかは関係なく、虐げられるものを助けることを正義とする健全なこども映画だ。
本作の特徴は、「未知との遭遇」の成功を受けて、宇宙からやって来る異星人は侵略者ではないというテーマが継承されていて、
前述のとおり如何にも不気味に描かれていた大人(役人)達が、終盤で顔を見せてからは、徐々に悪人(敵)ではなかったと判ること。
そして、本作は主人公エリオット少年に対するマイケル兄さんの“弟愛”の物語でもある。
普段は幼い弟をからかって、仲間に入りたがっても相手にしないのだが、誰よりも弟のことを理解していて、何に代えても守ろうとする、その姿が実に感動的なのだ。
弟に請われて行方不明のE.T.を探しに行くマイケル。
もう、ここからはマイケルの大活躍。
ここでBMX技が披露され、クライマックスへの布石となる。
兄弟がE.T.を救い出す一大逃走劇の冒頭、マイケルの悪友達は何が起きているのか知りもしないのに、マイケルからの合図を受けて、疑いもせず出陣する。この、“少年探偵団、出動!”的な場面がいい。
ここからは、壮大なジョン・ウィリアムズのスコアに乗せて、少年達のBMXとパトカーの息をつかさぬチェイスが繰り広げられる。
子供達はこれが正義だと信じれば、大人達と堂々渡り合うのだ!
そして、感涙の別れのシーンへと突入する。
劇場は中高年者が大半だったが、あちこちからすすり泣く声が聞こえた。
ほとんどが、公開当時既に子供ではなかった世代だ。
ピザの“出前”があるのか…とか、
ハロウィーンは大人も“扮装”するのか…とかに驚きながら観ていた。
だが、より大人になることに一生懸命だったこの世代は、純粋な子供心にも浸れず、完全な大人目線にもなれなかったはずだ。
だから今、失った純粋無垢を懐かしみつつ、緩みきった涙腺を解放するのだ。
E.T.から「Be good.」と言われて、良い子でいることを約束した妹のガーティーだが、ホントに可愛かったドリュー・バリモアが、良い子どころかドラッグにまみれたローティーンを過ごすことになろうとは皮肉だ。
その後、ラブコメディのジャンルに名を残し、プロデュースもこなす立直り方は立派だが。
こんばんは、共感していただきましてありがとうございました😊
何という詳しく細かく書いていただいたレビュー、ありがとうございます。
私、今の今まで、自転車をママチャリと以前聞いたように受け取っていて、KAzzさんの本レビューにて間違いに気づきました。
直ぐ言いふらした方に訂正いたしました。
ありがとうございました。