「ラストの衝撃。 悪魔は誰か。 USAの闇を見る。」イージー★ライダー とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)
ラストの衝撃。 悪魔は誰か。 USAの闇を見る。
自由がテーマの映画。
生き方の自由。
人を殺すことまで”自由”に含まれるのか。まるで、害虫や害獣を駆除するように。
様々な生き方が描かれる。
ヒッピー文化を体現する主人公の二人。
何物にもとらわれず、己の意思次第。
麻薬で一儲けしようとする。
大麻等のドラッグも嗜み、刹那的な人生。
特に信仰もないのか、信仰を持つ人からは驚愕の仕業も。(墓地であんなことをと目が点…)
その自由と引き換えに、宿に泊まれない等のリスクも負うが、それも引き受ける。
カソリックを信仰し、土地を耕し、自分の生きる場所を作る家族。
自分たちの力だけで作り上げたことへ尊敬の念を示す主人公の二人。
ちょっと意外だったが、フロンティアスピリットを尊ぶ精神は健全なのね。
お互い、自分たちの力だけで生きていくことが基本だが、だからこそ、助け合いの精神も健在。
家族にとっては、同じことの繰り返しの毎日に刺激を与えてくれる旅人として主人公二人を歓迎する。
同じヒッピー文化でも、仲間を必要とする集団。
その依存が新興宗教を作り出し…。
街の有力者の息子。
そのしがらみから逃げ出したい?
バイクで滑走するUSAの雄大な景色。
私でさえ、聞いたことがある曲の数々。
屋外上映会で鑑賞。大きなスクリーンの向こうに見えるのは晴れ渡った青い空。
旅する気分に、普段小さな建物の中で縮こまっている心が、解き放たれていく。
野宿の焚火に照らされた、ひそひそ話でさえ、心地よく。
アルコール依存症の癖に、それを自覚しているからこそ、大麻はやらないというジョージが初体験するさまは、三人とも20代の大人なのに、中学生の非行少年のように初々しく。
時々挟み込まれる今ここでの筋と関係ない映像。
フラッシュバックのよう。
トリップしていることを表現しているのか。
混乱しつつも、そのセンスの良さに目が惹きつけられる。
と、当時の破天荒な風俗が描かれて終わるのかと思っていたら…。
同調圧力。
自分とは違うものを排除することで、自分たちの正当性を確かめる。
若い娘が彼らに対して浮足立っている様から、彼女たちを奪われてなるものかという所有感もあるのだろう。彼女たちは自分たちのものだと。
彼らには罪の意識はない。
どころか、異端を駆除した英雄感すらあるのではないか。
集団(仲間)を守るという名目のもとに。
怖いのは、これがいじめの本質であり、この映画から半世紀以上たった今でも変わらないこと。
USAはトランプを復活させた。
でも、USAだけの問題ではない。
派閥、路上生活者への襲撃等、自分とは違う価値を持ち、違う習慣を持ち、違う見かけをしている人々に対して、日本や世界各地で行われている終わらぬ悲劇。
それを炙り出した映画。声が出ない。
☆ ☆ ☆
ピーター・フォンダ氏の映画は『世にも怪奇な物語』しか見ていないので、その雰囲気の違いにびっくり。美しい顔は同じなのに、こうも違うとは!
ジャック・ニコルソン氏の映画もまだ鑑賞している物は少ないけれど、アイビールックに身を包んだ、良家の息子で知的な職業についているというのは初めて。その上流階級らしさの品を残しつつのアルコール依存症。さすが!!しかも、舌の使い方とか、その後の『バットマン』や『ア・フュー・グッドメン』が見えてくる(笑)。