劇場公開日 1987年10月3日

「法による正義を貫く姿勢」アンタッチャブル Moiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5 法による正義を貫く姿勢

2025年6月14日
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鑑賞方法:VOD

感想

1930年、禁酒法施行下アメリカ有数のバーボン酒醸造生産地域とカナディアンバーボンの生産地であったカナダとの国境も近く、当時アメリカ第二の大都市であったシカゴの中心で悪法が罷り通る世界に必ずと言っていいほど蔓延る悪の職業であったマフィアの頂点として有名を馳せたアル・カポネ。禁酒法時代の絶対必要悪と思われた背徳感が蔓延する世相に一石を投じ、最終的にアル・カポネを刑務署に収監することに初めて成功した連邦(財務省)特別調査官エリオット・ネスと法の元での勧善懲悪の精神を護り悪に対して徹底して立ち向かった男たち即ちアンタッチャブルの活躍を描いた作品である。

正義を貫き悪事を暴く事は始まってしまったら後に引く事は出来ない。普段これくらいならいいだろうと法律を掻い潜り目を瞑ってしまっている悪はないか。それが少しでも気になるのであればその良心に従い勇気をもって正義を行使するべきである。その判断をした貴方は正しいし何も卑下することはないのだ。バカ正直で真面目な事はバカにされる事ではない。むしろ称賛されるべき事なのである。その小さな正義と正しさを護る事は人の在り方にも通じるものであるとモリコーネのエンドタイトル曲を聴きながら本作を観るといつも感じる事である。

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配役
エリオット・ネス:ケビン・コスナー
財務省特別調査官のエリオット・ネス役を若々しく瑞々しい雰囲気で演じたケビン・コスナーは本作の成功により以降本格的にハリウッドでの活動を開始した。

ジム・マローン:ショーン・コネリー
法に厳格で真面目なアイルランド系の老警官ジム・マローン。警察と司法をも巻き込み懐柔することでシカゴの中で我が物顔の悪事を繰り返すアル・カポネの行動にうんざりして閉口を決め込んでいたが、ネスの正義を貫くという情熱に共感し協力する。アンタッチャブルの中で一番の行動派であったが、カポネ子飼の殺し屋ニッティに銃殺される。銃殺の状況は衝撃的で死を迎える最後まで信念を貫き通そうとする姿は感動的で涙を誘う。本作においての頑固な燻し銀のようなアイルランド系の警官役を好演しショーン・コネリーは第60回アカデミー賞助演男優賞を初受賞している。

アル・カポネ:ロバート・デ・ニーロ
言わずと知れたアカデミー受賞俳優。名優である。この頃は悪役に拘りを持ち狂気の中にある恐怖をカポネ役で強烈によく表現していた。

オスカー・ウォレス:チャールズ・マーティン・スミス
シカゴのエリオット・ネスに財務省本省経理部から派遣された優秀な調査官。ジム・マローンに触発され密造酒の摘発などに駆り出されるうちに自信をつけていく。アル・カポネの裏帳簿を証言者と共に抑えるなどのアンタッチャブルとしての活躍が目立ったがカポネの差し金であるニッティに警察署内で暗殺される。アメリカの普通の人の役をすると素晴らしい好きな俳優さんである。

ジョージ・ストーン:アンディ・ガルシア
ダウンダウンに住むイタリア系のジョージ・ストーンは若い頃はジムも知っていた程の街の悪垂れであったが警察学校にはいり反骨精神はそのままに射撃の腕は抜群の正確性を誇る青年となりジムとネスにアンタッチャブルとしてスカウトを受ける。アンディ・ガルシア自身は本作を機に次々とハリウッド大作に出演していく事になった。

監督:ブライアン・デ・パルマ
作品により当たり外れが多いとされる監督だか、ともすれば非常に暗いクライムサスペンスに仕上がりそうな内容をとてもお洒落かつ華麗に描いていた。監督作としてはかなり傑作の部類にはいる。演出に「オデッサの階段」のオマージュが取り入れられたり、デニーロを名指しで指名しアル・カポネの狂気の描き方を詳細にするなど場面ごとに簡潔によく纏まっており映画造りの基本のような構成で素晴らしい。衣装もジョルジュ・アルマーニ氏のデザインてお洒落であった。

音楽:エンニオ・モリコーネ
全般に感動的で素晴らしい音楽。

脚本:デヴィッド・マメット
現代アメリカの脚本家の中で第一人者と呼べる実力を持つ脚本家。簡潔な展開がまとまりを感じる。

⭐️4.5

Moi
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