「常に前向きに生きる少年の直向きさ」アンジェラの灰 Gustav (グスタフ)さんの映画レビュー(感想・評価)
常に前向きに生きる少年の直向きさ
1930年代のアイルランドを舞台に、極貧生活の中で常に前向きに生きる少年フランクの直向きさを描き切るアラン・パーカーの力作。アイルランドの貧しい時代を描いた作品は多いが、このパーカーの演出ほどリアリティーを感じさせるものは無い。堅実な労働に勤しむことが出来ない父親の無収入の所為で、子育てに追われ精神的にも肉体的にも限界を超える母親が哀れ極まりない。主人公の母へ対する愛情が絶対的で唯一の救いだが、親戚の家に間借りする状況での母の不貞には、愛情の裏返しで厳しいものになる。物語は、再びひとりでアメリカに移住するフランクの船旅の場面で終わるが、学校進学を諦め郵便配達の仕事に従事するエピソードには、ユーモアと適度のセンチメンタルがあり、微笑ましい青春スケッチになっている。
エミリー・ワトソン、ロバート・カーライル共に地味ながら感情を抑えたいい演技を見せる。二人の名演を観るだけでも価値がある。主人公フランクを子役含め3人で演じるが全て良く、ここにもパーカーの演出の巧さを再確認する。
コメントする