劇場公開日 1974年9月26日

「パゾリーニ監督独特の映像世界にある人間の生と性の旅の物語」アラビアンナイト(1974) Gustavさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0パゾリーニ監督独特の映像世界にある人間の生と性の旅の物語

2022年3月18日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

パゾリーニ監督の世界三大艶笑文学の映画化シリーズを締めくくる「アラビアンナイト」は、エピソード集の「デカメロン」「カンタベリー物語」とは違って、一つの物語を紡ぐ展開の面白さと分かり易さを持ち、全体としては東洋的な神秘主義の映像世界が感じられて面白かった。詩人としてデビューし脚本家になったパゾリーニ監督の特徴がいい形で表れていると思う。それでも前作同様、欲望をさらけ出す人間の赤裸々な表現は相変わらずで、好みが分かれる作品には違いない。
町の売春宿でめぐり逢った少年ヌレディンと奴隷の少女ズルムードが離れ離れになってから奇跡の再会を果たすまで、映画は自由自在に若いふたりの運命の矛先を変える。しかも、その物語とは別なエピソードを加えて、人間が生きるとは予測の付かない旅のようなものとして詩的に描いていく。プロの役者はほんの数人で殆ど素人の若者たちで作り上げた、素朴で土着的なアラビアンナイトだ。結果的かも知れないが、そこに不思議な魅力がある。
神秘的生と性のパゾリーニ監督の分かり易い世界観が映像に表現されていたと思う。

  1978年 5月9日  池袋文芸坐

ピエル・パオロ・パゾリーニ監督は問題作「ソドムの市」制作の1975年に謎の事件で亡くなり、大きなスキャンダルとして話題になって個人的にも衝撃を受ける。その当時は未だ、「アポロンの地獄」などの代表作を手掛けたイタリアの名監督の一人として名前を認識するだけだった。死後幾つか作品を観たが、どれもが既成の映画と違って独自の個性を持った作家だったことを知る。それでも面白さ以上に感動を得る監督ではない。その中で、この作品と「テオレマ」には映画として好感を持った。

Gustav