劇場公開日 1970年4月18日

「フランス映画を観たという満足感がある」雨の訪問者 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5フランス映画を観たという満足感がある

2018年12月9日
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鑑賞方法:DVD/BD

フランシス・レイのテーマ音楽が最高!
これは映画音楽の定番人気曲でも有名
撮影がまた良い
「太陽がいっぱい」に似たタッチのフランス映画らしさが映像にある
そして舞台は南仏プロバンス地方マルセイユの近くマリニャーヌ郊外の海沿いの村
ひなびた南仏の空気感と温かい雨、明るい陽光が美しい
そこに主人公の旅客機パイロットの若妻役のマルレーヌ・ジョベールが登場する
彼女や彼女のちょいとスレた母親役の女優がまとうハイセンスな衣装がまた素敵なのだ
まるで生活感のないお洒落感のある世界を意図的に徹底している

チャールズ・ブロンソンは主演というよりは
ゲスト扱いというべきで、本当の主演は若妻役のマルレーヌ・ジョベールだ
彼女は30歳くらいであろうか、まだまだ十分に美しく、少女の面影すら残しており実際に子供っぽい
その大して頭の良くない行動がまた可愛く許せるのだ
彼女だからこそ、この独特な空気感のサスペンス物語が成立しているのだ
その性格を強調するために懐かしいスロットレーシングのミニカーを冒頭に登場させたりする

チャールズ・ブロンソンは本物の大人の男とはこう言うものだという態度物腰をみせる
それは主人公の亭主のパイロットの小物ぶりとの対比で強調される
彼の持つ余裕は鍛え上げられた肉体が発する比類ない行動力と実力を秘めている雰囲気がもたらしているものだ
これぞ渋さの名技だ

ラストシーンの背後のガラスが割れてチャールズ・ブロンソンが振り返って少し微笑むところに大人のドラマの妙味がある

お話も十分に面白いが、サスペンスの謎解き等は本作ではどうでも良いことであって深く説明も掘り下げもしない
可愛い若妻が健気に殺人を隠そうと彼女なりに浅知恵を駆使して悪戦苦闘し、それをチャールズ・ブロンソンが別の目的でその殺人の真相を余裕たっぷりに彼女をからかいつつ、探ろうとする
そのときの二人の間の関係性を巡る空気の微妙な匂いを楽しむそんな映画なのだ
流石はルネ・クレマン監督と感服せざるを得ない

翌年の「夜の訪問者」は続編ではなく、全く関係ない内容
チャールズ・ブロンソンが主演というのが同じというだけだ
あちらも良い映画だが、本作の方が断然良い

あき240