「観ると幸せになれる映画」雨に唄えば とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)
観ると幸せになれる映画
有名な、雨の中でのタップのシーン。
恋をしたことがある人なら誰でも共感してしまう舞い上がり。
「雨が降っている」「嵐を呼ぶ雲」「(けれども)僕の心の中には太陽」(飛ばし意訳)
マット・デイモン氏に似た(年代を考えれば逆か)、一本線になるたれ目、幸せを歌い上げる大きな口。表情を見ているだけでも、冷やかしたくなる恋の夢心地。
傘を手にした幼い頃。
一度はやった(やってみたかった)傘の大回し。歩道の端歩き。水たまりボッチャン、ビッチャン…。
そんな思い出が、気持ちの良い伸びやかな歌声と、そのリズム・音楽にあった軽快なタップで繰り広げられる。
警官の登場でオチが付くのもお決まり事。音楽・タップも一時止まるところもニクイ。
(カトゥーンやディズニー)
世界のすべてが、自分に笑いかけてくれていたころの幸福感に包まれる。
映画変革期のドタバタ。
苦労・困難、映画製作の舞台裏を見せてくれて興味深いが、ストーリーだけを語れば、幸福感あふれるノンストップムービー。壁に当たってもすぐに解決策が見つかり、最後はハッピーエンド。
なので、お気楽映画のようにも見えるが…。
一つずつのシーンを見ると、芸達者たちの珠玉の芸の集大成。
なんという身体能力!!!
ケリー氏とコナー氏のタップ!
歌舞伎にも、文楽人形を模した人形ぶりという所作があると聞いたが、二人のタップも、まるで糸でつられた操り人形の如く。あの足や手はどうなっているんだと、何度も確認してしまう。
そして随所に挟まれる一糸乱れぬ二人の共演パフォーマンス!
しかも、コナー氏独演では壁を使ったバク転まで披露してくださる。思わず、ワイヤーを探してしまう。
上述の雨の中のタップも、あの足元でタップ音が鳴り響く。タップ音を収録するためにあのパフォーマンスを再演したんじゃなかろうか?心のままにスキップしたようなパフォーマンスだが、計算されて磨かれたパフォーマンス!!!
ブロードウェイの場面は、正直、物語の筋から言えばなくてもよいシーンだが、踊っているケリー氏を見ていると、踊りたくて仕方なかったんだろうなあと惹きつけられてしまう。
ケリー氏もコナー氏もチャリシーさんも、クラシックバレエの基礎があるのだろうな。
映画としての演出にも目を見張る。
最初のインタビューも、語られている内容と映像で見せてくれる内容のギャップで笑わしてくれる。
そして、映画撮影の場面。撮っているのは・表情は愛のささやきなのに、語られている言葉とその調子は喧嘩。感情と表情を切り離す。これも映像観ながらのセルフアフレコ?演技?
ヘイゲンさんもあの裏声で全編通してよく芝居をしたな。ボイストレーニングでの外し方もツボ。声をちゃんとコントロールできていなければできない技と思う。
リナが声が悪いからと非難されるところは、コンプレックスだらけの自分からすると悲しいが、それ以外の勘違いぶりや横暴さをきっちり嫌味っぽく演じてくださるので、ラストが小気味いい。役者やのぉと言いたくなる。
そしてラスト。
キャシーの泣き顔から涙の後をそのままにしての笑顔がいい。
昔、アメリカ人形と言っていた、セルロイドの人形そのままの、レイノルズさんの顔。ショートの金髪巻き毛に縁どられた丸顔。つぶらな瞳。ぷっくりとした頬。肌色も真っ白ではなくて、ちょっと小麦色かかっているところがツボ。小さな口から美しい歌声が響く。
コズモの風貌もカトゥーンから抜け出てきたかのようだ。
歌も真似して歌いたくなる。
ダンスも真似して踊りたくなる。あんなふうにはできないけれど。
明日はきっといいことがある。周りには雨が降っていても(快晴じゃなくても)。
そんな気持ちにさせてくれる映画です。
共感ありがとうございました‼️
すごく心が上向きになる映画でしたよね‼️
キャシーの涙顔を振り向かせて笑顔にさせるドン。いいヤツです。劇場の客席の花道も使うあの演出には、僕もふと歌舞伎を想起しました。
恋して水たまり、失恋して水たまり。さまざまあれど
〽雨に濡れたスニーカーがやけに重くて、泣きたくなるそんなとき、毎日がスペッシャル🎵
(毎日がスペシャル/竹内まりや)を口ずさんでしまいました。
そうそう、歌舞伎の「人形ぶり」なら舞妓の修行をする富田靖子の「グズ」が感動的でした。