暗殺の森のレビュー・感想・評価
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アンナは美しかった
午前十時の映画祭13にて。
1938年のイタリアで、哲学講師のマルチェロは、友人イタロの仲介でファシスト組織の一員となった。13才の時に同性愛者のリーノに襲われたマルチェロは、その時リーノを射殺し、トラウマとなっていて、世間の波に乗ってファシズムを受け入れ、組織の一員となったのだった。マルチェロは、大学時代の恩師であり反ファシズム運動の支柱のクアドリ教授の身辺調査を任された。新妻ジュリアを伴い、新婚旅行と称してパリへ行き、クアドリ教授に迎えられたマルチェロは、美しい若妻アンナに魅了された。アンナはマルチェロが夫の身辺を嗅ぎまわっていることを警戒しながら、彼を誘惑してきた。間もなく組織の指示は、クアドリの暗殺へと変わり、マルチェロの監視役としてマンガニエーロという男が、張り付くようになった。マルチェロは恩師のクワドリを暗殺するのか?、アンナは?、てな話。
13才の自分が殺したと思っていたリーノが生きていて、自分がファシズムに傾倒した理由は勘違いで、ムッソリーニ政権も倒れ、これまでの人生、何だったんだ、と落胆したのはわかる。
しかし、あのラストはよくわからない。
アンナを愛していたのかどうか、助けを求められたのに知らんぷりはどうなのか?わからない。
当時のイタリア・ファシズムが何なのか、よくわからない自分の知識不足か理解力不足なのだろうが、この作品を面白いとは思えなかった。
アンナ役のドミニク・サンダとジュリア役のステファノ・サンドレッリはどちらも美しかったが。
難しい。
生きのこるための戦い
実に饒舌な映画である。セリフと音楽が終始流れ続ける。時系列が入り乱れ、場所もパリとローマが交互に現れるが、登場人物の過去や立場が、本人たちの言葉や挿入されるシーンでことごとく説明される。外ツラは難解だけど実はとても分かりやすい。
テーマとしては結局は政治体制と個人の間の矛盾、葛藤ということになるのだろうか。原作のモラヴィアはそのような趣旨で小説を書き続けた人だし(もっと冷笑的だが)ベルトリッチに多大な影響を与えたといわれるゴダールもそうだった(もっとエゴイスティックだが)
てもファシズムについてはどうだろうか。確かにベルトリッチがファシズムを激しく否定していることは映画を観れば分かる。でもこの映画におけるファシズム批判は官僚主義や形式主義批判としか成立っていない。それでは共産主義体制でも民主主義体制でも一緒でしょと思ってしまう。私の知識、認識ではムッソリーニのファシズムは典型的なポピュリズムである。これに反対してパリに移住した教授は良く言えば反・反知性主義の人で悪く言えばスノビッシュなロマンチストに過ぎないと言えるかもしれない。ベルトリッチは無邪気な人で映画の中ではインターナショナルが歌われるところがあって1970年の映画ではそれはないよなと感じてしまった。
いずれにせよこの映画は、体制と愛情の板挟みになった暗殺者(というほど大したことはないか)が生き抜くための戦いを描いたものです。
映画の中のトリヴィアについては午前十時の映画祭で本作を観た人へは町山智浩氏が解説で殆どしゃべっています。追加で一つだけ。ジャン=ルイ・トランティニヤンのスタイルですがあれはメルヴィルの「サムライ」からのいただきでしょうね。
最後にその町山さんの解説ですが「ミツバチのささやき」のレビューでも書いた通り、いささか喋りすぎの上に、自分の政治的信条に話をもって行き過ぎです。例えばファシズモとナチズムと天皇主義を同列に扱うのはあまりにも乱暴だと思います。ご本人の考えは変わらないでしょうからTOHOシネマは今後の解説の継続は一考願いたい。
インターナショナルは無いだろう!僕は見たのかなぁ?
初見ではないはずだが、何だかわけわからなくて、10分で熟睡。coffeeを2杯飲んでさぁもう一度。
『自分と似た人間がいると満足する。人混みの海岸やサッカーが好きで、、、自分と違う人間を警戒する』とファシズムの口上を聞き。
さて話はどうなるんだ。そうか、パリへ亡命中の教授を暗殺か!
って、この頃のフランスってファシズム真っ盛りだったのでは?ペタン元帥率いるヴィシー政権。少なくとも、3年後にはヒトラーがパリを陥落させる。パリはイタリアの反ファシズムの教授を受け入れる様な場所じゃない。1938年にドイツ高官が襲われて、ユダヤ人が迫害を受け、ホロコーストの始まる様な時代。こんなのんびりした話でファシズムを語る様な時代ではないはずだが。上映された現代に置き換えると、ベトナム戦争反対運動真っ盛りの時。果たして、僕はこの映画見たのだろうか?電話の受話器のシーンはなんとなく覚えているが。
見ていない!なぜなら、ドミニク・サンダはお尻が印象あるから。ロベール・ブレッソンの『やさしい女』だったね。見たのは。ドミニク・サンダの胸は記憶の欠片すらない。
いずれにしても、我が青春の1ページを飾るような名作ではない。見ればトラウマになっていたかもしれない。
兎に角、『不条理なストーリー転回』は良いが、フランス人はファシズムとは関係なく、イタリアやドイツとは違うなんて語る偽りが共感できない。
また、
イタリアは第二次世界大戦は日本やドイツの様に敗戦国ではない。ファシズムはイタリアが起源かもしれないが、ムッソリーニと共に形の上では滅んでいる。そして、寧ろ、コミュニストがその後台頭している。この演出家もその一人。それが悪とは言わないが、表裏一体のような気がする。
ベルナルド・ベルトルッチと言えば『ラスト・タンゴ・パリ』見たかったが、僕は当時高校生だった。R18だよ~ん。しかし、音楽はガトー・バルビエリ。
で、何故全否定しないか?
哲学教授の頭皮が、まるでキッバー若しくはヤルムルケみたいに見えた。つまり、その方を暗殺するとなれば、イタリア人としての自戒の念?さて。
ファシストが普通であった時代
本来超絶美しい映像なのだろうが、自分の見たのはVHS録画の吹替えカット版。だがノイズまじりの赤茶けた画面も悪くなく感じた。
ベルトルッチのテーマ「政治と性」が混沌と詰め込まれた内容。(監督はこのテーマで撮り続けた人なのだ)
ファシズムと屈折したセクシャリズム。イタリアのダークサイドを覗いた気分。
役者はみな美しくそこを楽しむ方法もある。しかし内容は重く、そんな気に自分はなれなかった。
やはり森のシーンが白眉。画面からヒリヒリする痛みが伝わってきた。
2018年初見では評価困難な哲学的戯曲
イタリアの事をよく知らない。ファシズムの事も、多分わかってない。この映画が世に出た1970年の頃とか、私はまだあっかいほっぺの子供です。大阪に万博観にいったなぁ。って言う時期。
真面目は盲目的と同意。裏切りは無知ゆえになせる業。国体維持に最も危険なのは思想。非行動の結果発生する残虐。他にも山ほどの小さいメッセージ。21世紀の今、「過度の多言は卑怯」だと思ってるが、当時ベルトルッチは30歳。血気盛んだったんだろうとは思うが、言葉が多すぎて困る。何が言いたいのかが判らなくなるから。ラスト・タンゴ・イン・パリ くらいで、ちょうどいい具合に灰汁が抜けてるんだな、って思いました。
同時に、なぜ小津・黒澤が世界の喝采を浴び、今でも慕われているのかが理解できました。核のあるストーリー、ラストに向かって絞り上げて行く様な・積み重ねて行く様な展開、言葉では言えないものを表現するための画。日本人だからなのかも知れないが、ベルトルッチのこの映画からも感じるものは沢山あったけれど、黒澤監督ほどじゃないんですよね。
パリでタンゴを踊るシーンの美しさと、森の中の暗殺シーンの絶望感にはココロ奪われました。
教授の夫人役ドミニク・サンダの優雅な美しさと妻のサンドレッリのコ...
教授の夫人役ドミニク・サンダの優雅な美しさと妻のサンドレッリのコケティッシュな雰囲気。昔から憧れだった夫人に冷たくされるものの肉体関係を結んでしまうマルチェロ。しかも、バレエ教室のクラスの5分間の休憩中だ。
結局女の競演を描くのが上手いベルトリッチ。夕陽と暗闇を対照的に取り入れている。男の世界は雪がバックであることが多く、精神病院に入ってる父に会うときなどは白さを強調する。政治色が強い映画かと思ったけど、暗殺に対する罪の意識や、裏でうごめく女心の葛藤のようなものの方が強い。
結局、教授夫妻を殺すことになったが、マルチェロは黙って見ていただけ。数年後娘もできて三人でファシスト崩壊のラジオニュースを聞く。さらに13歳のときに誤って殺してしまったと思っていた男も・・・
ラストの狂気じみた行動、人生を嘆いているような振り向きざまの表情がいい。途中、眠くなるような展開がもったいないです。
逃げ続ける…
センスだらけの映画
同調する人
洞窟の囚人。
ヨーロッパの役者は…
ベルトルッチと階段
乳白色のブルーを基調にしたパリの撮り方が美しい。
セーヌ河畔のメトロの高架は数々の映画に登場するロケーションだが、この作品でもサスペンスに満ちたシーンとなっている。高架下の道路を走るたった一台の車。上を走るメトロからは人の気配を感じられない。規則正しく並ぶ鉄骨の橋脚が言い知れぬ緊張感を謎を深めている。
魅惑的なパリの景色は他にも登場する。
エッフェル塔(を臨むシャイヨー宮の広場)や(作品中ではホテルに改装されている)オルセー駅は20世紀初頭のパリを象徴する建築物である。これらの建物は鉄を使用しながらもその意匠は柔らかな曲線を描いていることが特徴的だ。
これに対して、ジャン・ルイ・トランティニャン演じる主人公が「就活」のために訪れる国家機関の建物は直線だけで構成される空間を持っている。
自由な都市であるパリと、ファシズムの政権を立てたローマという二つの都市を建築を通して対比している。
ところで建築と言えばベルトルッチの作品を何本か観て気になることがある。登場人物の権力関係を階段で表すことが多い。
誰でもがすぐに思い浮かべることができるだろう、「ラストエンペラー」で幼い溥儀が紫禁城の階段を小さな歩幅で駆け上がるシーン。幼年の皇帝が、なんの迷いもなく、無自覚に権力の高みへ登っていく。
「シャンドライの恋」は階段の昇り降りが、一組の男女の愛と権力の関係を形作っている物語である。
この作品でも、主人公が彼の希望通りに秘密警察になるときには上の階に案内されて、階段を昇っていく。
また、初めて訪れたパリの恩師のアパートで、ドミニク・サンダがステファニア・サンドレッリを階段の上から見おろすことでこの二人の力関係が決まってしまう。
しかし、この作品でもっとも語られるべきは、外光が一方向から射す部屋で、昔の師弟が自意識について語るところではないだろうか。
恩師曰く、人は「光を当てられた自分の影を自分自身だと思っている。」のだと。人間は自分自身の全体の姿を見ることができない。鏡に映る姿や影は自分自身という実体ではない。そのことを分かっていながら、自分が何者であるかを知りたいと思うところが人間の弱さであり、だからこそ人は「影を作り出すための光を求めるのだ。」と。
この会話の最後に別の角度からの光が当たり、壁に映っていた主人公の影が消える。ファシズム政権が崩壊するラストを待つまでもなく、主人公の影であるセルフイメージが消失しているのだ。
さて、映画のラストはサンタンジェロ城、コロッセオといったローマの古い建物が出てくる。近代的な自我が現れるよりも前に建てられたその建築を舞台に、ファシズムに酔っていた者たちの自意識が溶解していくのである。
ジャン・ルイ・トランティニャンの変容ぶりが素晴らしい。前半のファシズムと自らを同化することになんの疑問も持たない、無垢な冷たい表情は、後半、その任務に苦悩し、やがてファシズムとともに崩壊していく。
映像美は賞賛に値するが
この映画のポイントは映像美であり、特にカメラワークが素晴らしい。撮影が誰だと思ったら、「地獄の黙示録」や「ラストエンペラー」のヴィットリオ・ストラーロだった。
それと、ドミニク・サンダが美しく、圧倒的存在感だった。特にダンスシーンは見所だ。
ただ、他の俳優がややもするとコミカルで、ドミニク・サンダだけ異質な感じがした。それと、森で暗殺されるまでの展開と、暗殺されるシーン、ムッソリーニ崩壊後の主人公の行動、その3部分が全くテイストが異なり、かなり違和感を覚えた。
また、吹き替え版でなく字幕で見ているが、セリフのアフレコがかなり合っていないことが多く、基本的な作りの雑な面が気になった。特にステファニア・サンドレッリが一番ひどく、セリフや笑い声がわざとらしく、B級映画を二流の声優の日本語吹き替え版を見ている感じだった。
個人的にこの映画を低評価にしているのは、主人公だ。あんなに好きなはずのドミニク・サンダが殺されるのを何もしないでいるのは許せない。同じ優柔不断の性格でも、ベルナルド・ベルトルッチ監督の傑作「ラストエンペラー」の主人公には感情移入できたのだが。まあ、この映画から「ラストエンペラー」を作るまでは17年の開きがあるので、この頃はまだまだ監督も未熟だったのだろう。せっかくのヴィットリオ・ストラーロ撮影の映像美を台無しにしてしまった。
深い
日本語のタイトルは『暗殺の森』だが、原題は"IL COMFORMISTA"。イタリア語で「周りに同調する者」という意味。この映画の軸は単なるファシズム批判ではない。実はファシストなんて者はいない、みな正常であろうとするからファシストだったのだ。そしてこれはもっとも正常でありたかった男、Marcelloの話である。その主張は随所で見られる。盲目の親友イタロとの会話、教授との洞窟の比喩の会話。ムッソリーニが失脚した途端民衆はころっと態度を変える。
なんの予備知識もなく一度観ただけではあまり面白くないのではないか。私は一回目は1人で、二回目は教養のあるイタリア人と観た。一回目は美しいという印象が強かったが二回目でいろんな疑問が解けBERTOLUCCI監督のすごさを知った。
最後に、ファシズム建築と美しい女性たちがこの映画に花を添えている。
眠かった
映像や女優がとても美しく、惜しみなくおっぱいも見れるのだが、とにかく退屈で眠くなる。110分なのに寝てしまい2回中断した。主人公の男のキャラが薄い。単なる暗い美男子でしかなく、何の面白味もない。殺害場面は変でちょっと面白かった。しかしその表現は好きな映画だったら嫌だったかもしれない。
全然好きでもなんでもない作品なのだが、妥協なく懸命に上質なものを仕上げようとしている感じはうかがえた。ずっと気になっていた映画だったので見れて気が済んだ。
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