劇場公開日 1953年1月3日

アパッチ砦のレビュー・感想・評価

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4.0【組織の長がヒエラルキーに拘り過ぎ、且つ思想の違う人たちを否定的に観た結果の悲劇をジョン・フォード監督が見事に喝破したそれまでの西部劇には無かった描き方をした作品。今作は現代でも通用する作品である。】

2024年10月19日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

知的

難しい

■ネイティブ・アメリカン、アパッチ族との戦いが続く“アパッチ砦”に左遷されたサースデイ中佐(ヘンリー・フォンダ)。  功を焦る彼は先任将校のヨーク大尉(ジョン・ウェイン)と先住民族のネイティブ・アメリカンに対する思想の違いや、組織の中のヒエラルキーへの拘りの違いから衝突を繰り返し、砦に不穏な空気が流れ始める。  そんな中、アパッチ族蜂起の知らせが伝わる。  サースデイは功を挙げるために他の将校の反対を退け、部隊に出動を命じる。 ◆感想 ・今作で、ジョン・フォード監督が見事に喝破した事はレビュータイトルに書いた通りである。  サースデイ中佐は、赴任当初から“アパッチ砦”に赴任した事を恥じ、功を挙げようと必死になる。  序盤は、その辺りがユーモラスを交えて描かれるが、中盤からは一気にシリアスになって行くのである。 ・この、サースデイ中佐の思想は、現代社会でも面々と哀しき事に引き継がれている。アメリカ及び一部の欧州各国で言えば、自国ファースト主義が台頭し(今作で言えば、サースデイ中佐がネイティブ・アメリカンを【絶対悪】として捉えている点である。)難しい問題があるのは重々承知しているが、移民を排除し、有色民族に対して敵意を持つ思想である。 ・今作では、ネイティブ・アメリカンの族長たちが、直々に自分達の考えをサースデイ中佐に伝えるシーンがキチンと描かれている。  これも、今までの西部劇には無かったシーンである。  ジョン・フォード監督の、先住民族であるネイティブ・アメリカンの位置づけをキチンと描いている先見性には敬服する。 ■尚、余計な事かも知れないが、私は数年前から”インディアン”という言葉は使わない。”インディアン”とは、後からアメリカ大陸に来た白色人種の造語であるからである。  日本で言えば、アイヌの人達を”蝦夷民族”と呼ぶのに近しいものがあると思うからである。 <今作は、予想通りサースデイ中佐が率いる舞台は、悲劇的な最期を迎える。これも当時の西部劇としては画期的な事である。  商業的に言えば、不興を買ったと思われるが、それでもジョン・フォード監督は真実を美化する事無く描いている。  ジョン・ウェイン演じるサースデイ中佐の前任者であるカービー・ヨーク大尉の、哀し気な表情が印象的な作品である。>

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NOBU

3.0退屈

2024年8月29日
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フォード先生の名作の一つらしいですが、終盤を除いて良さがわかりません。 西部劇というよりは部隊内部の人間関係やちょっとした恋愛ストーリーが序盤から中盤にかけて続きますが、メリハリがなくテンポの遅いので退屈極まりないです。 戦闘シーンになると俄然フォード調が最高潮に達しますが。

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越後屋

5.0例外をつくらないこと

2022年8月13日
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鑑賞方法:DVD/BD

1948年。ジョン・フォード監督。中央から最前線のアパッチ砦に左遷されてきた指揮官。規則を盾に現場に規律をもたらしつつ、同行している娘の行状まで管理しようとする。現場との軋轢を生じつつも指揮官として命令を下し続ける男。そのつけを最後に自分自身で払うことになる、という話。 自分自身を例外として扱わない(扱えない)という意味では極めて公平で、そのためにとてつもなく悲劇的な主人公。だからこの映画は基本的には悲劇だ。指揮官は権威を振るって満足してるのではなく、どうしようもなく規則を遂行しているだけだから(娘の交際相手について自ら規則から踏み出した行動をして部下にたしなめられ、謝罪している。肉親の感情×規則の遂行)。しかし一方で、その姿は喜劇的でもある。部下に規則で言い負かされ、娘に出し抜かれ、ダンスを踊らされる。この一筋縄ではいかない描き方がフォード監督の真骨頂。憎まれ役も憎めない。 ほかにも、同期らしき下士官との関係や新人教育の様子、兵士たちの日常などコミカルな部分が多くておもしろい。複雑な人間関係を複雑に描いている。

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4.01948年製作のようだ。NHKBSプレミアムシネマを連ドラ予約して...

2022年4月20日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

1948年製作のようだ。NHKBSプレミアムシネマを連ドラ予約しているので、 先住民絡みの映画をよく見る、本作も数ヶ月前にも観た。 ヘンリーフォンダとジョンウェインが、本社から地方に飛ばされた頭の固い支店長と、 部下の信任厚い現場叩き上げの次長の掛け合いのように思えた。 インディアンの悲劇に焦点を当ててるわけでもなく、無謀な作戦により多くが犠牲になる 悲惨さを特に強調しているわけでもないので、当時の娯楽作品なのだろう。 ジョンスチュワート主演の『折れた矢』でも族長コーチーズは出てくるので 有名な族長だったのだろう。

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藤崎敬太

2.0フォード監督はネイティブアメリカンを勧善懲悪の相手として描くばかりではなかった

2021年4月13日
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鑑賞方法:DVD/BD

何故この映画を観たか、実は以前、 私が「捜索者」について、フォード監督は、 「シャイアン」までは“ネイティブアメリカンを 勧善懲悪の相手として描き続けた映画人生”と 投稿したところ、ある方から、 “フォード監督は、 視野の広い価値観を持つ人道主義者 …ネイティブアメリカンを援助するために 映画制作をしていた”と教えて頂き、 また、未見だった「アパッチ砦」の 英雄像への寛容性の言及もあり、 今回の鑑賞になった次第でした。 話は、無能で好戦的な司令官と、 それを諫める副官との葛藤が中心の ありがちな展開で、ラストに象徴的な 帽子の継承シーンはあるものの、 若者の恋愛や下士官等の周辺要素に 時間が割かれ過ぎ、また 見事な騎馬・幌馬車の疾走シーンの 多用にも係わらず、 肝心の主人公二人の人間描写が弱いため、 メインテーマへのまとまりに欠け、 ラストシーンにつながる緊迫感の高まりも 感じなかった。 果たして作品の出来としてはどうだろうか。 さて、フォード監督の映画姿勢だが、 この作品では、 入植者のネイティブアメリカンに対する 理不尽な対応や、 他の作品とは双方が真逆に見える等、 他のフォード映画には無い描写もあり、 彼が、決して一方的にネイティブアメリカン を勧善懲悪の対象としていた訳ではない ことを、他の方のアドバイスで知ることが 出来た。 私は“映画.com”で投稿の皆さんの レビューを拝見させていただく時、 単に共感の時だけでは無く、 知らなかった情報を頂いた時や、 自分とは異なる発想での解釈があることを 教えて頂いた際も “♥共感”クリックさせていただいています。 何かと見識の広がる場として、 この“映画.com”に感謝すると共に、 今後ともこの場を大切にしていきたいと 考えております。

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KENZO一級建築士事務所

4.0正にブラックホークダウンの源流はここにあります

2019年6月16日
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鑑賞方法:DVD/BD

本作は黄色いリボン、リオ・グランデの砦と1年ごとに製作された騎兵隊三部作の最初の作品です 流石はジョン・フォード監督でいちいち小ネタを挟んで来るので全く飽きさせません ジョン・ウェインは31歳で若さを感じます 珍しいことに中間管理職の役柄です それで、やってられねーよの雰囲気が強調される仕組みなわけです ヘンリー・フォンダは左遷されてくるダメ指揮官役で、実力を伴わない尊大なプライドの塊を見事に演じてくれます 取り巻く下士官や兵隊達もなかなかに芸達者ばかり その指揮官の娘役のシャーリー・テンプルがとても可愛いく空気を和ませてくれる良い演技力を示します 撮影も良く、雄大なモニュメントバレー、素晴らしい雲と大空の広がりを捉えています 1948年の作品ですから白黒は当然、画面も4:3の画面です しかし画角がとても広く感じられる のです 構図の作り方、構成力が見事な技量を示しています 特に終盤の決戦のシーンの見事さは筆舌に尽くし難いものです 指揮官とラッパ手が騎乗する馬が二頭横に並ぶシーン、そして横隊の全貌を捉え、ヨーク大尉を見上げるカメラと続き、前進の号令がかかり進みだす騎兵隊の一連のシーンは西部劇屈指の映像だと思い出ます 指揮官の無謀な作戦で壊滅する米軍、襲撃する圧倒的な人数の現地の民兵 それは120年後のソマリアと同じ構図です 正にブラックホークダウンの源流はここにあります そしてエピローグ 恐らく2年後のアパッチ砦に新聞記者達が取材に来ているシーンです 後任の指揮官に昇格したヨークは記者達に、戦死したサースデイ中佐を立派な人だと称え連隊の名誉を守ります そして指揮官以外の兵士達も忘れされるのではなく永遠に生きている、連隊と共に生き続けると語ります 月給13ドル、食料は豆と草、馬の肉も食わねばならぬ 酒を奪い合うくせに、水筒の最後の一滴は分け合う 時が流れようと大事な心はそこにある 彼らの軍人としての魂は引き継がれていく、と そのメッセージはブラックホークダウンでラストに生き残った二人の兵士が語るメッセージと同じものです そして指揮官の娘を妻としたオルーク少尉との間に生まれた幼児を抱き上げるのです 若い世代の安全を守り、未来を作り上げる為に連隊は存在しこれからも永遠に働き続けるのだというメッセージを持って終わるのです それをジョン・ウェインが語り、名付け親になっている子供を抱き上げるからこそ説得力があるわけです 連隊を否定すれば、若い世代もその子供達の未来も、なにもかも無に帰る外ないのです だからラストシーンはジョン・ウェインが先頭に立って進む騎兵隊のシーンで終わるのです

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あき240

3.5この雲を見ろ!

2014年7月17日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

興奮

幸せ

騎兵隊3部作の第1作目。ここで映し出される雲を見て欲しいと思います。この美しさと、それを背景として展開される人間の愚かさ、このコントラストが何とも胸を打ちます。そしてそんな愚かな人間であっても、それが死地へと向かう間際には、何とも神々しくもなるんです。そしてここまで含みこんでこその、フォードなんだと改めて感じました。単純な勧善懲悪ではない大きな眼差しをいつもフォードには感じます。

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チャーリー

4.0人の話を聞かず思いつきで行動するトップは、昔なら命取りだった

2011年9月4日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

興奮

知的

自分が生まれた翌年の作品である。当然、リバイバルも含めスクリーンでは観ていない。 1876年のカーター中佐率いる第七騎兵隊の全滅がモデルで、大筋は次のようになる。 ○功名を焦り現場の意見を聞かない新任上司 ○新任上司の娘と部下の息子が恋に落ちるが認められない ○新任上司と衝突して解任された主人公が戻ってくる こうしてみると、ストーリーのポイントが同じような映画が現在まで何本もあった。 この「アパッチ砦」では功を焦る愚かな司令官の無謀な作戦によって、軍の壊滅という取り返しのつかない事態を招く。 失策は己の命ばかりか、何十、何百という部下の命を無駄にする。下の者から「もう、やめましょう」とは言えない時代だ。そういう時代があったことを肝に銘じた上で、今の平和をありがたく思う。 信望を得ることの難しさ、撤退する勇気の大切さをテーマにした今作、このあと作られた「黄色いリボン」「リオ・グランデの砦」に比べ、遊びが少なくシリアスな作りになっている。 主役のジョン・ウェインの役どころが、上官に押さえつけられる小隊長という立場で、指揮官を演じたほかの2本と設定が大きく異なる。 西部劇としての見せ場は騎兵隊の幌馬車がアパッチの襲撃から逃れるシーン。 疾走する幌馬車の幌が風を巻き込んですっかり剥がれ、丸い骨だけが残った状態になるがまだ逃げる。スピードは限界を超え、蛇行する馬車に転倒するのではないか、あるいは車輪が外れるのではないかとハラハラする。と同時に、特撮無しの実写の迫力に唸らせられる。 ドラマでは新任のサースデイ中佐の娘フィラデルフィアと、マイケル・オローク中尉の恋の行方が気になるところ。シャーリー・テンプルが小っちゃくて利口そうな瞳がくりくりして可愛らしい。 オローク中尉の父、古参のオローク軍曹は息子より階級が下になったものの、やはり息子が気掛かりで何かと画策する親心を見せる。 同じ軍曹のマルケヒー。演じるヴィクター・マクラグレンが騎兵隊3部作すべてで観る者を和ませる大きな存在になる。 モノクロでも大地と雲の美しさを感じる。

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マスター@だんだん