劇場公開日 1953年1月3日

「正にブラックホークダウンの源流はここにあります」アパッチ砦 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0正にブラックホークダウンの源流はここにあります

2019年6月16日
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鑑賞方法:DVD/BD

本作は黄色いリボン、リオ・グランデの砦と1年ごとに製作された騎兵隊三部作の最初の作品です
流石はジョン・フォード監督でいちいち小ネタを挟んで来るので全く飽きさせません

ジョン・ウェインは31歳で若さを感じます
珍しいことに中間管理職の役柄です
それで、やってられねーよの雰囲気が強調される仕組みなわけです
ヘンリー・フォンダは左遷されてくるダメ指揮官役で、実力を伴わない尊大なプライドの塊を見事に演じてくれます
取り巻く下士官や兵隊達もなかなかに芸達者ばかり
その指揮官の娘役のシャーリー・テンプルがとても可愛いく空気を和ませてくれる良い演技力を示します

撮影も良く、雄大なモニュメントバレー、素晴らしい雲と大空の広がりを捉えています
1948年の作品ですから白黒は当然、画面も4:3の画面です
しかし画角がとても広く感じられる のです
構図の作り方、構成力が見事な技量を示しています
特に終盤の決戦のシーンの見事さは筆舌に尽くし難いものです
指揮官とラッパ手が騎乗する馬が二頭横に並ぶシーン、そして横隊の全貌を捉え、ヨーク大尉を見上げるカメラと続き、前進の号令がかかり進みだす騎兵隊の一連のシーンは西部劇屈指の映像だと思い出ます

指揮官の無謀な作戦で壊滅する米軍、襲撃する圧倒的な人数の現地の民兵
それは120年後のソマリアと同じ構図です
正にブラックホークダウンの源流はここにあります

そしてエピローグ
恐らく2年後のアパッチ砦に新聞記者達が取材に来ているシーンです
後任の指揮官に昇格したヨークは記者達に、戦死したサースデイ中佐を立派な人だと称え連隊の名誉を守ります

そして指揮官以外の兵士達も忘れされるのではなく永遠に生きている、連隊と共に生き続けると語ります

月給13ドル、食料は豆と草、馬の肉も食わねばならぬ
酒を奪い合うくせに、水筒の最後の一滴は分け合う
時が流れようと大事な心はそこにある
彼らの軍人としての魂は引き継がれていく、と

そのメッセージはブラックホークダウンでラストに生き残った二人の兵士が語るメッセージと同じものです

そして指揮官の娘を妻としたオルーク少尉との間に生まれた幼児を抱き上げるのです

若い世代の安全を守り、未来を作り上げる為に連隊は存在しこれからも永遠に働き続けるのだというメッセージを持って終わるのです

それをジョン・ウェインが語り、名付け親になっている子供を抱き上げるからこそ説得力があるわけです

連隊を否定すれば、若い世代もその子供達の未来も、なにもかも無に帰る外ないのです
だからラストシーンはジョン・ウェインが先頭に立って進む騎兵隊のシーンで終わるのです

あき240