アタラント号のレビュー・感想・評価
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今も昔も都会の魔窟から被害者を救うのは身近な人の愛情か
作品としては高名だったので、
近くの図書館からレンタルして初鑑賞。
私にはこの作品の歴史的評価は出来ないが、
ヴィゴ監督と撮影のカウフマンの
元々の見事な構図描写に、
近年の修復技術が加わったためか、
時代を感じさせない鮮明で美しい
映像作品だった。
ストーリーは、
花嫁が単調な船中生活に飽きて
パリという大都会の魔窟性に
一旦は心奪われるが、身近な人に救出
される、という良くある話ではある。
DVD添付の解説書には、ヴィゴ監督が
「月並みなストーリー(中略)の脚本を
嫌った」とあるので、当時でも
珍しくはない筋書きだったのかも知れない。
都会には、良いも悪いもなく一旗揚げようと
人々が集まってくる魔窟になりかねない要素
が、当時の人々の意識にもあったのだろう
と思う。
その都会の魔窟要素は現代にも生きていて、
そこから人を救うのは、
やはり身近な人の愛情しか無いだろうと
再確認させてくれた作品だった。
この時代にこのような映像を撮っていた才能は恐るべきもの
素晴らしい人間讃歌
人を見つめる優しい視線
ユーモアというかペーソツと言うべきか
老水夫を中心に展開されるされが絶妙なアクセントになっている
それをとらえる斬新なカメラワーク
この時代にこのような映像を撮っていた才能は恐るべきものだ
ラフトシーンはどう見ても空撮にみえる
一体どのようにして撮影したのやら
現代に通ずる映像手法を多用している
リマスターされた映像は鮮明でオリジナルにはあったであろう色彩を感じる程の階調豊かなもの
同時代の他作品と比較すると先進性が明らかだ
ゆく年を想う映画鑑賞となった
本年最後の映画館での鑑賞となる。
予告では、トリュフォーやカウリスマキ、クストリッツァらに多大な影響を与えたと謳われているジャン・ヴィゴの現存する唯一の長編作である。
これら我々の時代の巨匠らの名前に一つ足りない名前がある。
セーヌ川を下るはしけ船が目指すのは、河口の街ル・アーブル。はしけから川へ飛び込んだ後の水中の幻想的なショット。これは、これは、これは、レオス・カラックス「ポンヌフの恋人」そのものではないか。そう言えば、オープニングのタイトルやキャストの文字も、「ポンヌフ」と同様である。「主演俳優の名前 dans 映画のタイトル」といった具合だ。
そうなのだ。カラックスが彼の出世作でやったことは、ヴィゴのこの作品へのオマージュなのだ。
爺さんが若い二人の仲に亀裂を入れる存在である一方で、二人の絆を深めるきっかけにもなっている。そして、若い娘の気持ちを本当に理解しているのが、若い男ではなく、爺さんのほうなのだ。そんなところまで、この二つの作品は似ている。
はしけの甲板を這ってこちらへ向かってくる俳優が、そのままカメラの上を通り過ぎるショットなど、カメラワークが独創的で、映画の楽しさが溢れている。
また、何度も出てくる壊れた蓄音機や、レコード盤を指で擦る
シーンなど、映像と音が組み合わさったときの面白さも新鮮で、もう一度観たいという欲求が残った。
まさに、トーキー創生期の傑作である。彼がもっと長く生きていたらどんな作品を残しただろうか。若くして夭逝した日本の山中貞雄とオーバーラップさせずにはいられない。
そして、字幕は、本年6月にお亡くなりになった寺尾次郎氏によるものであることを付け加える。
改めて氏のご冥福をお祈りしつつ、本年の映画鑑賞を終えることとする。
時々、ハッとしました
名作ということで、よく名が上がるこの作品。興味津々で観てみましたが、ちょっと私にはまだこの良さがちゃんと掴めなかった感じがしてます。
だけど、船上に人が佇んでいる絵などは、とてもハッとさせられたりするし、飲んだくれの船員の存在感も映画を感じさせるものがありましたね。
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