明日に処刑を…のレビュー・感想・評価
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史実のようで創作
デビッド・キャラダインは数年後、本作と変わらない年代を舞台に『ウディ・ガスリー/わが心のふるさと』で似たようだとは言わないが、反体制的なフォーク歌手でホーボーでもある偉人を演じた、やはり『俺たちに明日はない』が代表的で他にはロバート・アルトマンの『ボウイ&キーチ』はニコラス・レイが撮った『夜の人々』と同じ原作でもあり、ジョン・デリンジャーの伝記映画をジョン・ミリアスが『デリンジャー』として、アメリカは世界恐慌時代のアウトローが登場する史実や創作もゴチャゴチャに傑作だらけの作品群、ロバート・アルドリッチの『北国の帝王』も忘れてはいけない。 ロジャー・コーマンの下で若きスコセッシが手腕を振るった本作での実験的に思える映像表現からラストの暴力描写が今観ても斬新でヌードが多目なのも珍しいがロジャー・コーマンだから納得、磔の場面は掌じゃなく手首に打ち込まれる釘が痛々しくて脈に直通、スコセッシはカサヴェテスから本当に自分の撮りたい映画を作れ、と軽く説教されたらしい!?
気骨のあるスコセッシ監督の演出が既に確立した初期の力作
「アリスの恋」「タクシードライバー」と優秀作品を手掛けたマーティン・スコセッシ監督の初期の1972年制作で、物語は実話に基づくと云う。1930年代の不況下のアメリカを舞台としていて、放浪する若者たちの傷だらけの生き様を克明に描写している。貨物列車を移動手段にする浮浪者ホーボーの存在を初めて知ったのはロバート・アルドリッチ監督の「北国の帝王」(1973年)だったが、このスコセッシ作品が1年前に扱っていたことになる。その「北国の帝王」はアルドリッチ監督らしいアクション映画の醍醐味が勝る力作だった。また、30年代の不況下の強盗犯罪ではアーサー・ペン監督の「俺たちに明日はない」を想起させるが、このスコセッシ監督の演出タッチは、そのどちらにも似ない独自のものを持っている。ホーボーの悲痛な感情を哀感込めて描かず、治安官との憎悪の激しい闘いを骨太なリアリズムで描き切っていた。それでいてユーモアも自然に感じられるほどに、人間味のある力強いドラマが創作されている。けして傑作とまでは高評価は出来ないが、スコセッシ監督の演出の個性は充分感じることが出来るし、それがこの作品の一番の見所であった。これで脚本がもっと練られたものであったら更に優れた映画になっていたと思う。 演技では、主人公のバーサ・トンプソンを演じるバーバラ・ハーシーが最もよく、彼女の名前を忘れないようにさせるくらいの熱演だった。アナーキストのビル・シェリーのデビット・キャラダインも持ち味を出して好演。その他主要俳優の演技面を観ても、スコセッシ監督の演出の巧さがある。ラストは、警察隊に捕まったビルが貨車の引き戸に貼り付けにされるという凄まじいシーンで圧巻だが、動き出した貨物列車を追うバーサを徐々に小さく捉えた演出は、意外に古典的なタッチ。こんなところにも映画愛が感じられて好感を持つ。制作費の少ない小品でも、スコセッシ監督の気骨ある演出を観るべき力作だった。 1977年 2月8日 大塚名画座
スコセッシ
マーティン・スコセッシの長編デビュー作!1972年の映画だし、どんな映画だろうとなんとなく見始めたけど、不思議な魅力に引き込まれて最後まで観てしまった。 バーサ…なんか見たことあるなーと思ってたら、『ブラックスワン』のおかーさんだわ!とか、ビルは『キル・ビル』のビルだ!とかいろんな俳優の若き日の姿見ることができたのも面白かった。 『最後の誘惑』を思わせるようなシーンやラスト…とにかく釘付けになって観てしまう作品。改めて、スコセッシ監督は天才だなと思った。
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