悪魔のいけにえのレビュー・感想・評価
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原点かつ最恐
今、半笑いでこのレビューを書き始めましたが、これは百回ぐらい鑑賞してようやくたどり着ける境地であり、初見だと死ぬほど怖いです。
私の文章でネタバレしてしまうのはもったいないので、未見かつホラーがお好きであれば、まずは鑑賞をオススメします。
※※※※
お昼は誰も死なないという、ホラーの安全地帯をぶち壊した映画です。
時間に関係なく、目が合えば追ってきますし、捕まれば高確率で死にます。
若者5人からすると、殺人鬼一家のお留守番がレザーフェイスというのも、実に間が悪かったと思います。(もしかしたら、ニートでいつも自宅にいるのかもしれませんが)
ただ、レザーフェイスの立場に立てば、留守番をしていたら次々と知らない人が入ってくるわけで、頑張って殺しながらも『なんなんだよぉ~』と慌てる様子は、どこか可愛いです。
殺人鬼一家の正体にしても、意外に賑やかで、ちょっとはケンカもするけど基本はハッピー。若者5人が訪れた日以外の日常を想像できる余白が、ちゃんと用意されています。
そして、このクセ強家族が揃う夕食の場面からは、画面から摂取できる狂気がカンストして面白くなってきます。久々の獲物に有頂天になる3人はなんとも嬉しそうで、思わずほっこりしそうになりますが、若者側の生き残りであるサリーがお誕生日席に座らされているのは、久々のお客さんだからではなく、これから屠られる『ごちそう』だからという、怖い要素もちゃんとあります。
最後は、殺人鬼一家と過ごした夕食の時間が恋しくなるぐらいに、ハードコアなホラーに逆戻りしますが、サリーとレザーフェイスがいよいよ対決するのかと思いきや、何も起きません。
いやマジで、逃げるだけで精一杯です。
結局、地道にスコアを決めてきたレザーフェイスのひとり勝ち。画面がブラックアウトする瞬間に恐怖の頂点を据えてくるのも、凄い演出です。
世界のどこかには、知らずに足を止めたら高確率で命を落とす道がある。
強烈な余韻を残す、名作です。
本当に50年前!?すげえ映画だよ
個人的ホラー映画ランキングをぶち抜いてって堂々の一位になったかもしれない。
皆さんもタイトルだけはどこかで聞いたことがあるであろう本作。もう50年近くも前の作品で、90年代のジェイソンやフレディでもキツかった僕としては期待値は更に低めだった。U-NEXTでの配信が終わる前に観ておこうという程度のモチベーションだった。
そして蓋を開けてみると・・・・まるで70年代のましてやホラーとは思えないほどのテンポの良さと分かり易さ、そして絵面の見やすさにまずは驚嘆した!!『え、これ2000年代とかに撮影されたリメイク版じゃないのよね?』と思うほど、50年前の作品とは思えない現代でも見やすい内容にまずは驚かされた。
5人で小旅行的なドライブでもしている如何にも中西部のアメリカンという感じの若い男女達。それぞれ見た目からしてキャラクターが伝わってくるシンプルさで、とても俺の想像していたホラーとは違う雰囲気。意外とこのデブが主人公か~と思わせといて、まさかあっさり死ぬとはね。
それと昔のホラーあるあるなのが、冒頭で車いすがひっくり返るシーンみたいな、ああいう化け物や超常現象とは”全く関係の無い所で”その後を予感させるような酷い目に遭ったりする演出。これが良いんだよなあ笑。今は全くレザーフェイスとか関係無いけど、なんか今日は悪い日な気がする。そんな予感。ジワジワきちゃうねえ。
話を戻して、この味方サイドとなる若い男女5人組も全員のキャラが立っていてそこから惹かれた。デブだけど勇敢そうなデブ。頼りになりそうなイケ男。股の緩そうな女。メガネのインテリチックな男。そして最後まで生き残る彼女も、ヒステリックながら勇敢さの有る主人公気質な女だった。
それと相見えるは、もうThe挙動不審男という感じのジャンキーな痩せ男に、70年代らしい南部系の親父さん(しかもちゃんと親子同士似てる)、そしてお待ちかねのレザーフェイス。
もうね、やっぱりホラーって安っぽさと昔の雰囲気こそ正義ですよ!あの汚さはセットじゃ出せない。ジャンキー男なんて男の俺でも画面越しに嫌悪感を抱くような気持ちの悪さで、次に何をしでかすか分からない男と同じ車に閉じ込められたヒヤヒヤ感が最高(褒め言葉)だった。
そのジャンキーとレザーフェイスの親父さんも一皮むけるとヤバい顔を隠してました的な変質者的怖さが素晴らしいし、あのやべえ息子二人を従えてるなんかよく分からない偉さにちょっと惚れ惚れもしたり笑。
そして、レザーフェイスは全てが最高。それほどマスクで隠れても無くて向こうの顔がチラついてるし、首から下はただのデブ白人って感じで、でもそんなただのデブ白人がキモいマスク被って唸るだけでこんなに不気味なんだ!!っていうバランスが、もうヨダレ出ちゃいそう。
歯も汚いし汗臭そうだし、ホラーの真髄ってやっぱり生理的嫌悪感なんだなあと染み染み感じられた。CGが怖くないのはコレが無いからだよ。『うわぁ~触りたくね~~~』っていう嫌さが画面越しにも漂ってくるかのような、アレこそがホラー映画のあるべきテイストなのだと感じられた。
そんなレザーフェイス達も何か凄い殺人装置が有るとか大舞台になっている訳では無く、普通にチェーンソーやハンマーでぶち殺してくる。昔の撮影技術も有るが、だからこそシンプルでありのままの殺害方法がネチっこくてリアルで気持ち悪い感じでより相乗効果になっていたと思う。昨今のは画面も何も綺麗すぎるんだよ!
それと最後のオチなのだが、レザーフェイス達が道路まで追いかけてきて通りかかる一般人の目も気にせずに朝日をバックに暴れてるところとかもう最高。普通もっと現代で作ったら親父さんが止めたりだとか監視してて『ヤバい事になったぞ‥』みたいなワンカットが入りそうなモノなのだが、もうジャンキーとレザーフェイスが人の目なんてお構い無しで突っ込んでくるが故に、よりアイツらの異常さと執念と何よりこっちの価値観で生きていないのが伝わってくる迫力に圧倒される。拡大解釈かもしれないが不気味だった。
計画的な殺人でもなく、バックに何かが居るわけでもなく、吸血鬼であるとかそういうオカルトでも無い。”ただただ異常な親子が”その殺人衝動のままにぶっ殺しまくって明くる日には普通の生活を送っている。そんなヤバい家がトラックも通るような道路沿いに有る。
このバランスがもうね、最高。
恐怖と狂気の果てを見た
1970~80年代は後世に残る人気ホラーが続々誕生。
『オーメン』『ゾンビ』『ハロウィン』『13日の金曜日』『死霊のはらわた』『ポルターガイスト』『エルム街の悪夢』…あなたはどれがお好き?
中でも本作は、金字塔に挙げられる。
トビー・フーパー監督による1974年作。
テキサスの田舎に帰郷した若い男女5人が遭遇する惨劇、恐怖、狂気…。
開幕から不穏な雰囲気を漂わせる。
その田舎町で続く墓荒らしのニュース。
脂肪がゼリー状と化した死体。
本編冒頭のハイウェイに横たわるアルマジロの死体…。
5人はヒッチハイカーを乗せる。相手や自分の身体を切り付けるイカレ野郎。
途中、ガソリンスタンドに立ち寄る。バーベキューもやっているという一見親切そうな経営者だが…。
思えば、この時から目を付けられていたと言えよう。
目的地の廃屋。
その少し離れた所に、一軒家。
誰も住んではいないだろう。中は廃屋同然で薄暗く、不気味な蜘蛛が蠢き、動物や人間のものと思える骨が…。
それは突然襲い来る。
殺人鬼、レザーフェイス!
人の皮で作ったマスクを被った大男。
うめき声以外喋らず、そもそも意思の疎通や人の感情などあるのか…?
代名詞とでも言うべきチェーンソーで襲撃。よくジェイソンと間違われるが、チェーンソーで襲い掛かって来るのはこのレザーフェイスである。
そのジェイソンやブギーマンなどマスクを被った殺人鬼の元祖とも言えるだろう。
一人、また一人と殺されていく。
逃げ惑うヒロイン。
チェーンソーの音とヒロインの絶叫で、迫真。
何とかガソリンスタンドに逃げ込み、助けを求めるが…。
ここから衝撃の事実の連続。
レザーフェイスとガソリンスタンドの経営者、さらにはあのヒッチハイカーまでもが家族。
墓荒らしも彼らの仕業。
戦慄の殺人ファミリー。
イカレ、クレイジー、キチ○イ、サイコ…それらに当てはまる言葉を集めてもまだ足りない。
一体彼らは何者…? 凄惨な行為の目的は…?
人の恐ろしさ、おぞましさ、悪しき心、病んだ心の成れの果てなのか、
この殺伐としたテキサスの田舎町が彼らを駆り立てたのか。
いや、理由など皆無に等しいのか…?
効果音のようなBGMが不穏な雰囲気をさらに醸し出す。
手持ちカメラ風のざらついた映像があたかもドキュメンタリーのようなリアリティー。フェイクドキュメンタリー・ホラーの先駆けでもある。
そして何と言っても、トビー・フーパーの演出。商業映画デビュー作であり、最高傑作。
本作のマスターフィルムがNY近代美術館に永久保存されているのは有名な話。もはや芸術レベル。
シリーズ化されたが、他のホラーと同じく質落ちの道へ…。
マイケル・ベイ製作によるリメイク版はなかなか悪くなかったが(ジェシカ・ビールがセクシー!)、やはりこの第1作目が格別。
ショッキングなラストもインパクト大。
恐怖と狂気の果てを見た。
これは名作。
この映画、レザーフェイスの視点で見るべき映画だと思います。
車に乗り込んだ男も、
途中ガソリンスタンドで出るおじさんもグルだとは。
お爺さんにハンマーで殴らせようと何度も何度も握らせるけど力が入らなくて失敗するシーンはとても面白かった。
最後の獲物をレザーフェイスが追い回すところは一切妥協がなかった。
そして夕陽に照らさながらチェーンソーを振り回すレザーフェイスのシーン。美しすぎです。
テキサスほのぼの一家!!
勢いがある映画で、レザーフェイスの登場シーンや爺様の指しゃぶり等で笑えます。殆ど人が来ないだろうに臨戦態勢になっている所も想像すると笑えます。Wikipediaでエド・ゲインの項を読んで更に楽しめました。硫黄島でも米兵は日本兵の遺体を煮込んで骨を持ち帰り、西海岸で雑貨として売ったという事なので、特に異常者でなくても遺体で遊ぶ事ができる人は一定数存在するのだと思います。悪魔か何かを崇拝していたわけではないので、邦題は違うと思いますし、テキサスチェーンソーに直して欲しいです。夕暮れの中くるくる回るラストが美しいです。
嫌悪と恐怖の境界
①80分強という時間もあってか、全体的にテンポ良く事が進んでいく。言い方を変えれば全部突拍子もない。ゆえにその先何が起こるか予測しづらい。不安感やイライラが溜まってくる。
②嫌悪感を煽る要素しかない。登場人物の恐怖の表情とか、クラクションとか、止まない叫び声とか、レザーフェイス一家のキチガイさとか、BGMとか、眼球の血管まで寄せたカットとかだ。
ホラー要素のないシーンですらその調子である。
ジェリーが全然車を止めなかったり、フランクリンがなかなか段差を登れなかったり、他の4人がフランクリンのことを煙たがったり、フランクリンが延々と牛殺しの話をしていたり、とにかくイライラを極限まで引き上げてくる。
この①と②のせいで、終始めちゃくちゃ胸糞悪い気分でしかなかった。この感覚も恐怖なのか。自分でもこれが何なのかよくわからん。
しかし、精神的ダメージは計り知れず、若干トラウマになったぐらいである。背筋が凍るような恐怖ではなく、心臓をえぐり出すような恐怖がこの映画にはあるのかもしれない。
80分という時間で、テンポ良く進めるところとしつこく引き伸ばすところのバランスがすごく良く取れていたと思った。
あとはカメラワークと編集。引きと寄せの対比とか、ワンカットが長い短いの対比とかすごい見るものを翻弄する。
技術的にはたいへんすごい映画なんだろうなと思いつつ、心はもう一度見るのを拒絶している(笑)
やっぱり自分は怖かったのかと今になって気付いた。
これがオールタイム・ベストかぁ
助かったあの娘の将来が心配になるしトラックの運チャンの巻き込まれ具合が可哀想。
最初の三人は自ら殺されに行っちゃってる感じで車椅子のデブはヒッチハイカーと一緒でブーブーうるさくて気持ち悪い。
あんな風に追いかけられたら確かに怖過ぎるしあの風貌がまた怖い。
70年代のザラついた映像に雰囲気が恐怖心を煽るし現代にも存在し得るイカれた家族。
愉快な家族
マスターフィルムがその芸術性の高さからニューヨーク近代美術館に永久保存されている。舞台美術や色彩含め評価されている。常軌を逸した猟奇と不条理さがコント的と見えてしまう自分達は壊れているのかもしれない…。日本人的には理解し難いが、インターネットも無い時代広大なアメリカでは国内でも地方集落に住む人間とコミュニケーションを取る事、知らない地で知らない人間がもしかしたら想像もしない事をしており、その恐怖と遭遇し得るかもしれないという恐怖もあるのかもしれない。
ブーッブブブーッ!!
やたら長い逃走シーン、店主がエコロジスト、みんな揃って無意味なツンツン、レザーフェイス実はエルモ、微笑ましい団欒からのスーパー絶叫タイム。おじいちゃんを交えて食後のレクリエーションからのバリーン。
夕陽に照らされチェーンソーと踊るレザーフェイス、爆笑必至のラスト15分は必見です!
好みの問題か…?
ホラーの名作という前評判から見てみましたが…
合わないんでしょうか…これ何が面白いんですかね…
ただ猟奇的殺人鬼が人を殺すだけ…
主人公の女性は逃げてる最中も悲鳴を上げ続け
本当に逃げる気があるのかと思えました。
車いすの御兄さんがひたすら鬱陶しいんですが
そのお兄さんが殺されたとこだけすっきりしました。
これがなんで名作と言われているのか理解に苦しみました…
素敵な一家
ホラー映画をいろいろみてきましたが、
悪魔の~死霊の~なになに系があまりにもたくさんあるので、
こんな傑作を今の今まで見逃していました
でてくる化物?(人だけど)たちがすごくよかった
気持ち悪いとか怖いを超えた表現だと思いました…
おじいちゃん、サイコの母親みたいに死んでる!と思ったら
実は生きてて恐怖というより笑ってしまった…ハンマーのシーンもしかり
公開当時、この映画はどんな位置づけだったのか気になる
あまりにもコミカルで
物語終盤は、最後の生き残りの女性が、逃げ出すシーンからずっとクライマックスが続く感じでした
普通盛り上がりがあったら、そのまま下がったりするものなのに
この映画はそれを感じさせない持続したハイテンションさ
忘れられない食卓シーン。ランプの顔面まで芸が細かくて…
変態村がいかにこのシーンに影響を受けたかわかりました…
DVDに収録されていたメイキングやオーディオコメンタリーがおもしろかったです
弟役の俳優が、撮影した家を案内してくれるんですが
小奇麗なレストランでした
当時人が住んでた?ので、ほかの部屋には入らず撮影したと言ってましたが、一体どういう状況で撮影されていたんでしょう
しかも冒頭の骨はほんとの人間の骨をつかったとか…
一体どういう状況!?
名作でした
悪魔のいけにえ?
私はYouTubeで予告編を観てたので、誰がどのシーンで死ぬのかが大体分かってしまったのでちょっと残念だった。
怖さのピークはカークがやられる家のシーン。外は静かな日中であるが家の中の異様な空間にジワジワくる恐怖を感じた。
レザーフェイスの父が登場してから、レザーフェイスがちょっと憎めないキャラへと印象が変わった。
最初と最後の赤ちゃんの声の様なキュイーンという音がなんとも不気味で印象的だった。
邦題の『悪魔のいけにえ』について、墓嵐はしていたが、宗教的な儀式として殺人してる様には思えなかったので邦題に違和感を感じた。
すごくよかった
レザーフェイスがキュートだった。彼は人殺しなのだが、別に悪意はなく、怖がらせる意図もない。家族に命ぜられてしているだけで、チェーンソーも不器用なだけだ。不気味なマスクは単にセンスが不気味なだけで、本人としては正装のつもりなのではないだろうか。そんなことを思った。
ガソリンスタンドのお父さんとキチガイの兄貴が怖い。特に兄貴は怖すぎてすごく嫌だ。
爆音上映で、発電機の音が超うるさかった。
最後彼女が助かって本当によかった。
(ドゥ~ン)…ポカーン(°д°)
衝撃ですよ…中学生の頃なんの気なしに実家にあった古いビデオを再生したら、この作品が入ってました。
知ってる人ならわかるでしょう…トラウマにならないわけがありません。
最初は、なんか車に乗せてもらった人おかしいな、ぐらいにしか思ってなかったんです。(それでも手を切るシーンはめっちゃ怖かった)
そして…若者の前になんの前触れもなく唐突に現れるレザーフェイス。
いきなり鉢合わせた若者をハンマーで殺害。若者を部屋へ引きずりこんだあと、鋼鉄製のドアをまるで視聴者に「見んなオラァ!!」とでもいうかの如く荒々しく閉める。
この間約数秒。
これであっけにとられないやつなんていないでしょう。
だって見えてるもん全身。隠す気ゼロだもん。
ここで、なるほどーこの映画頭がおかしいんだなっ♪って気づきました。
変態家族の食卓とか、妙に美しいラストとか、良くも悪くも印象に残ってしまい、かれこれ数十回は観ています。
そして大人になって、演出の巧さに気づきました。
危険な意味で、生涯のベスト5に入ってしまっている映画です。
感情移入できないまま目撃する恐怖
基本的に、例えばスクリームのような笑えるホラースプラッターならよいのだが、血がドバーざっくり切れて内臓コンニチハまさかり刺さった金太郎映画はどうにも苦手である。(ゆえにリアル手術場面を追求した「海と毒薬」は未見)産毛の生えた生白い腕にいきなりつきたてられる鈍く冷たく光る剃刀。ゆっくりとそれは引かれ、じくじくと肉にめり込み、産毛は鳥肌をたてて立ち上がり、切り開かれた黄色い肉が見えた瞬間入れ替わるようにひとすじの赤い流れがやがて奔流となり吹き上げ周囲どころかこちらの目まで朱に染まる!のぶぇ!とまあ、そういうわけでその手のジャンルの金字塔たる「悪魔のいけにえ」はたぶん一生見ることはないだろうと覚悟を決めていた。だがよんどころない事情で見る羽目に。而してその結果は大変上質なホラー映画でございました。ま、当然だけど。
確かに話の筋や組み立て方すくいようのない切れ味抜群のラストまでを構図的に美しいカットでたたみかけるようにもって行く。見ながら「あーここのカットをTシャツにしたらいいなあ」という感想をぼんやり抱いていたのだが(例:スーツ姿のレザーフェイスがチェーンソーを振り上げるラストシーンとか)ホラースプラッターの元祖だからこそ残虐な映像はかえって少ない。今のほうがずっとずっとえげつない映像を作り上げているのだが、生理的な嫌悪を呼ぶ怖さ、心臓をつかんでひねり潰されるような緊張感をこれほどたたえた映画を私は見たことがなかった。当然いわゆる「お約束」的シーンも(今日的な視点からすれば)存在する。だが、その「お約束」をそうと認識させない、ひねくれてネタにしようと待ち構えるこちらへ問答無用にチェーンソーを突き立ててくるレザーフェイスにやられまくりでした。暗い中捜索しているシーンがあれば当然レザーフェイスが襲い掛かってくるだろうというのは予測できてしまうのだが、それをあえて「ずらして」くるので、ここかよオイ!と観客は肝や腹や掌や背筋を冷やすのです。またいわゆる「花鳥風月カット」(ストーリー上なんの脈絡もなく唐突に映し出される月や豊かな自然の風景、夜の街といったアレ)が箸休め的に挿入されるのだがそれがこちら側が恐怖に耐性ができる頃を見計らって入れられるのだから始末が悪い。通常花鳥風月カットでひとやすみひとやすみ(一休さん)となるのだが、逆にそれがあるからこそ怖いという恐るべき結果となっている。なんということだ。あまりの怖さに監督トビー・フーバーへの怒りもわいてくるほどだ。ふざけんなバーカ怖さのあまり死にそうになったじゃございませんか。
また突然現れる登場人物たち(それは被害者となる若者グループも同様である)は「なぜ彼らがその行動を取るのか」をまったく説明しない。被害者達は一体どこへ行くつもりだったのか。フランクリンはなぜ歩けないのか。彼らの関係性はなんなのか。(フランクリンとサリーは姉弟であることがかろうじてわかるが、その他三人との関係がわからない)存在として「怖い」のは実は彼らの方である。描きこまれない主人公たちの希薄なリアリティとは対照的に、レザーフェイス一家の存在感と実在感に圧倒される。どこへ、何をしに行くのか。それは現実の私たちと同じように、「彼ら」もまたわからないのだろう。ここで確実に理解しているのはプリミティブな欲求のままに行動する「彼岸」を越えた原始の人「レザーフェイス」らだけなのだ。奇妙に盗作した状況下の中、いつの間にか主人公達の不安と恐怖よりも、「レザーフェイス」たちの原始的な「力」への憧れにも似た衝動が湧き上がってくる。それはワンカットワンカット、美しい構図で描かれている事も関係してくる。展開されている出来事は酷く、酸鼻を極めるとしか言いようのないものなのだが、「嫌悪」の一点で拒否できない魔力があるのは、認めるべき事実であった。
殺人本好きの観点から言えば(よくいわれていることだけれども)レザーフェイスの室内調度品がいい。エド・ゲインネタをよくぞここまで再現したなとヘンな風に感心する。ひとつひとつの「モノ」は雑でよく見ると変なんだが、その手作り感が妙なリアリティを生んでいるのも確かだ。CG全盛期の今、これほどの恐怖体験を練り上げられるかといえば否である。
それにしても、三十を過ぎ、地獄も天国も自分なりに見てきた上でこの映画にぶちあたったのは幸運といえる。もし 10代はじめでこの映画を見ていたら、吐くどころか、トラウマのあまり以後映画を見ることはできなかったか、下手するとこの手の映画しか受け付けない体になってしまったか、どちらかだろう。これを「真実の物語」と題された「リアルドキュメント」モノという「一ジャンル」であると考えて「見れる」から衝撃が驚嘆へと変えられるのだと思う。この映画をこのように「外側」ではなく「内側」で見てしまうことが、おそらく一番の恐怖体験だと思う。「お約束だ」なんていってあひゃあひゃ喜んで見られることのシヤワセよ。ぐいぐいと胃の腑を引き絞られる感覚を味わいながら、もっとくれーと被虐感を楽しめるようになったら一人前の変態ですわい。
絵的にどうしようもなく美しいカットとこれ以上ない緊張感に満ちた、残虐で悪趣味な物語。それを芸術とはいえないという人もいるかもしれない。だが映画なんてエログロナンセンスを驀進力にしてここまでの地位を獲得してきたようなものだ。見るものへリビドー全開を要求するような「悪魔のいけにえ」二度と見ないだろうが、でも、三年後にもう一度みたいと思えるような、見終わった後不思議な哀愁を感じる、恐怖と切なさが残る、ジェットコースターというよりは、電波文がいっぱい書かれた廃屋を探検するような、暑さよりも乾き(渇き)を感じる、傑作映画である。
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