「本当に50年前!?すげえ映画だよ」悪魔のいけにえ 真中合歓さんの映画レビュー(感想・評価)
本当に50年前!?すげえ映画だよ
個人的ホラー映画ランキングをぶち抜いてって堂々の一位になったかもしれない。
皆さんもタイトルだけはどこかで聞いたことがあるであろう本作。もう50年近くも前の作品で、90年代のジェイソンやフレディでもキツかった僕としては期待値は更に低めだった。U-NEXTでの配信が終わる前に観ておこうという程度のモチベーションだった。
そして蓋を開けてみると・・・・まるで70年代のましてやホラーとは思えないほどのテンポの良さと分かり易さ、そして絵面の見やすさにまずは驚嘆した!!『え、これ2000年代とかに撮影されたリメイク版じゃないのよね?』と思うほど、50年前の作品とは思えない現代でも見やすい内容にまずは驚かされた。
5人で小旅行的なドライブでもしている如何にも中西部のアメリカンという感じの若い男女達。それぞれ見た目からしてキャラクターが伝わってくるシンプルさで、とても俺の想像していたホラーとは違う雰囲気。意外とこのデブが主人公か~と思わせといて、まさかあっさり死ぬとはね。
それと昔のホラーあるあるなのが、冒頭で車いすがひっくり返るシーンみたいな、ああいう化け物や超常現象とは”全く関係の無い所で”その後を予感させるような酷い目に遭ったりする演出。これが良いんだよなあ笑。今は全くレザーフェイスとか関係無いけど、なんか今日は悪い日な気がする。そんな予感。ジワジワきちゃうねえ。
話を戻して、この味方サイドとなる若い男女5人組も全員のキャラが立っていてそこから惹かれた。デブだけど勇敢そうなデブ。頼りになりそうなイケ男。股の緩そうな女。メガネのインテリチックな男。そして最後まで生き残る彼女も、ヒステリックながら勇敢さの有る主人公気質な女だった。
それと相見えるは、もうThe挙動不審男という感じのジャンキーな痩せ男に、70年代らしい南部系の親父さん(しかもちゃんと親子同士似てる)、そしてお待ちかねのレザーフェイス。
もうね、やっぱりホラーって安っぽさと昔の雰囲気こそ正義ですよ!あの汚さはセットじゃ出せない。ジャンキー男なんて男の俺でも画面越しに嫌悪感を抱くような気持ちの悪さで、次に何をしでかすか分からない男と同じ車に閉じ込められたヒヤヒヤ感が最高(褒め言葉)だった。
そのジャンキーとレザーフェイスの親父さんも一皮むけるとヤバい顔を隠してました的な変質者的怖さが素晴らしいし、あのやべえ息子二人を従えてるなんかよく分からない偉さにちょっと惚れ惚れもしたり笑。
そして、レザーフェイスは全てが最高。それほどマスクで隠れても無くて向こうの顔がチラついてるし、首から下はただのデブ白人って感じで、でもそんなただのデブ白人がキモいマスク被って唸るだけでこんなに不気味なんだ!!っていうバランスが、もうヨダレ出ちゃいそう。
歯も汚いし汗臭そうだし、ホラーの真髄ってやっぱり生理的嫌悪感なんだなあと染み染み感じられた。CGが怖くないのはコレが無いからだよ。『うわぁ~触りたくね~~~』っていう嫌さが画面越しにも漂ってくるかのような、アレこそがホラー映画のあるべきテイストなのだと感じられた。
そんなレザーフェイス達も何か凄い殺人装置が有るとか大舞台になっている訳では無く、普通にチェーンソーやハンマーでぶち殺してくる。昔の撮影技術も有るが、だからこそシンプルでありのままの殺害方法がネチっこくてリアルで気持ち悪い感じでより相乗効果になっていたと思う。昨今のは画面も何も綺麗すぎるんだよ!
それと最後のオチなのだが、レザーフェイス達が道路まで追いかけてきて通りかかる一般人の目も気にせずに朝日をバックに暴れてるところとかもう最高。普通もっと現代で作ったら親父さんが止めたりだとか監視してて『ヤバい事になったぞ‥』みたいなワンカットが入りそうなモノなのだが、もうジャンキーとレザーフェイスが人の目なんてお構い無しで突っ込んでくるが故に、よりアイツらの異常さと執念と何よりこっちの価値観で生きていないのが伝わってくる迫力に圧倒される。拡大解釈かもしれないが不気味だった。
計画的な殺人でもなく、バックに何かが居るわけでもなく、吸血鬼であるとかそういうオカルトでも無い。”ただただ異常な親子が”その殺人衝動のままにぶっ殺しまくって明くる日には普通の生活を送っている。そんなヤバい家がトラックも通るような道路沿いに有る。
このバランスがもうね、最高。